2017.11.24 | ニュース

非小細胞肺がんの体幹部定位放射線治療は誰が使う?米学会の推奨

ASTROの推奨をASCOが修正採用

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology

非小細胞肺がんの体幹部定位放射線治療は誰が使う?米学会の推奨の写真

肺がんの治療にも使われる体幹部定位放射線治療は、狙った場所に正確に放射線を照射する技術です。非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療の使い方について、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)が推奨を出しました。

体幹部定位放射線治療とは?

放射線治療では狙った場所の周りにも放射線が当たってしまうことが副作用の原因になります。体幹部定位放射線治療(SBRT)は、放射線をいろいろな方向から分散して、かつ狙った場所に正確に照射することによって、周りの臓器のダメージを抑えつつ治療効果を発揮することを目的としています。

 

非小細胞肺がんに対するSBRT

ASCOは、アメリカ放射線腫瘍学会(ASTRO)が作成したSBRTのガイドラインを検証したうえ価値あるものと認め、ASCOの意見を参照する人が使いやすいよう細かな修正を加えて、自ら発行する専門誌『Journal of Clinical Oncology』に掲載しました。

早期の非小細胞肺がんがある患者が対象とされました。非小細胞肺がんとは肺がんのうち小細胞肺がんというタイプ以外のものを指します。

ASCOのガイドラインには、要約すると以下の内容が記載されました。

  • ステージIで手術のリスクが標準的な患者にSBRTは勧められない。
  • 手術のリスクが高いまたは手術不能と見られた患者でSBRTが考慮される。また以下のように治療法に迷うケースでもSBRTが選択肢となる場合がある。
    • がんが中枢部に位置する
    • がんの大きさが5cmを超える
    • 組織診がなされていない
    • 複数のがんが同時に発生している
    • 肺切除術のあと新たながんが発生した
    • がんが縦隔に近いか縦隔に及んでいる
    • がんが胸壁に接している
    • 前の治療後にがんが再発した
  • 多分野から成るがん診療チームの中で治療選択を話し合うことが重要。

 

体幹部定位放射線治療は使うべき?

非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療について、アメリカ臨床腫瘍学会が著した推奨を紹介しました。

肺がんの治療はがんの状態や全身の状態などによって細かく使い分けられています。どの治療を優先して選ぶかの判断は複雑です。紹介したガイドラインでも多分野から成るがん診療チームが相談することの重要さが強調されています。

そんな中でも、すでにわかっていることがガイドラインの形に整理されていることで、事実に基づいた判断の助けとし、患者自身が意思決定の過程に加わって最適な治療を目指すために役立てることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Stereotactic Body Radiotherapy for Early-Stage Non-Small-Cell Lung Cancer: American Society of Clinical Oncology Endorsement of the American Society for Radiation Oncology Evidence-Based Guideline.

J Clin Oncol. 2017 Nov 6. [Epub ahead of print]

[PMID: 29106810]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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