2017.11.13 | ニュース

砂糖を減らして肉を食べるのが本当にいいのか?新研究をめぐる論点

PURE研究とそれに対する応答

from Lancet

食事と健康の関係について無数の研究がありますが、結論が一致していない点もあります。最近報告された大規模研究の受け止めかたについての意見を紹介します。

PURE研究に対する2人の医師のコメント

世界18か国で食事と病気や死亡率の関係を追跡調査した「PURE研究」の結果が、2本の論文として『Lancet』に報告されました。

これらの報告に対するコメントとして、同じ号の『Lancet』に掲載された、アメリカ国立衛生研究所(NIH)に所属するラムスデン医師とドメニキエッロ医師の意見を紹介します。

 

PURE研究とは?

PURE研究は、世界各地の国で35-70歳の対象者を集め、生活習慣などの要因と将来の病気や死亡率の関係を調べたものです。

18か国から集まった、計135,335人のデータが解析されました。追跡期間は半数の人で7.4年以上でした。

結果として、2本の論文の一方は「炭水化物の摂取量が高いことは全死亡リスクが高いことと関連した。その一方で総脂肪と個別の種類の脂肪は全死亡リスクが低いことと関連した」、もう一方は「果物、野菜、豆類の消費量が高いことは心血管系以外の死亡リスクおよび全死亡リスクが低いことと関連した」と報告しています。

仮に食事の違いが原因で死亡リスクの違いが現れていたと考えるなら、食事の炭水化物を減らし、脂肪を増やし、野菜・果物・豆類を多く食べるのがよいという結論になるかもしれません。

しかし普通、こうした種類の統計からそれほど単純に結論は出せません

 

PURE研究をどう考えるか?

ラムスデン氏とドメニキエッロ氏は、PURE研究の結果が現在ヨーロッパと北米の多くの国にある食事の推奨と違う点について、どう受け止めるかを考察しています。

たとえば、PURE研究の結果だけで、脂肪を多く含む肉や乳製品を多く食べたほうが長生きできるとは断定できません。「脂肪」ではなく「肉や乳製品」と死亡率の関連を知るには、「徹底した解析を完了させる必要がある」としています。

また動物製品は金属やビタミンなどを豊富に含むことから、もともと何らかの微量栄養素が不足していた人にとっては動物製品が有益とも考えられます。この点がPURE研究に影響して、動物製品に有利な結果が出ていた可能性についても「さらに調査できる可能性がある」としています。

炭水化物と死亡率の関連についても、どんな種類の炭水化物が問題になるかという観点が示されています。

PURE研究の全体については、「PURE研究の当初の結果は、食事と病気についての型通りの信念に疑問を突き付ける。その信念はおおむねヨーロッパと北米の人々について観察された関連に基づいている。そしてPURE研究の結果は、健康的な食事とは何かが不確かであることを強調する」と記されています。

 

PURE研究で何がわかったのか?

食事と健康についての研究と、その解釈を紹介しました。

PURE研究が提示した問題意識から、今後の研究によって食事の推奨は変わっていくかもしれません。しかし、PURE研究の結果そのものが新しい推奨に直結するかどうかはまだわかりません。

食事のような複雑な問題に対しては、ひとつの研究の結果を解釈するだけでも十分慎重になる必要があります。従来の見解をよく理解したうえで、新情報の位置付けを考えることも、情報に振り回されないためには大切なのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

PURE study challenges the definition of a healthy diet: but key questions remain.

Lancet. 2017 Aug 28. [Epub ahead of print]

[PMID: 28864330]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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