前立腺がんのロボット手術と開腹手術はどっちがいい?
前立腺がんの手術では、お腹を大きく切る従来の方法に代わって、ロボット手術が普及してきています。手術方法による違いが調査されました。
限局前立腺がんに対する開腹、腹腔鏡下手術、ロボット手術
オーストラリアの研究班が、前立腺がんに対する手術の方法による違いとして以前に報告されているデータを調査し、『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
調査対象として、
腹腔鏡下手術はお腹に小さな穴を開けて腹腔鏡という機械を挿入して行う手術です。ロボット手術は腹腔鏡下手術と同様ですが、外科医の操作により精密に動く機械(ロボット)を使います。
再発・生存の差は不明、入院期間が短い
条件を満たす2件の研究が見つかりました。
前立腺がんによる死亡について比較した研究はありませんでした。生化学的再発のない期間について、また死因を問わない死亡について比較した研究もありませんでした。
1件の研究から、排尿に関する生活の質(
排尿・性機能ともに、ロボット手術と開腹手術に統計的な差はないと見られました。
1件の研究から、ロボット手術と開腹手術で手術後12週時点での痛みに統計的な差はないと見られました。
1件の研究に基づくと、ロボット支援根治的前立腺摘除術は入院期間をおそらく減らす(平均差-1.72日、95%信頼区間-2.19から-1.25)。
1件の研究から、ロボット手術は開腹手術よりも入院期間が平均して1.72日程度短いと見られました。
どの結果も確信度には若干の疑問もあると見られました。
ロボット手術は有効?
前立腺がんの開腹手術とロボット手術の比較を紹介しました。
日本で行われる前立腺がんの手術は、開腹手術よりもロボット手術のほうが多くなっています。ロボット手術は2012年に保険診療とされて以来急速に普及しています。詳しくは前立腺がんの解説ページをご覧ください。
この報告では手術後の再発や生存の差について不明という結果でしたが、背景として前立腺がんに対して手術が勧められる状況では10年以上の生存も期待しやすく、まだ手術方法による差が出るほど長期のデータは得にくいと思われます。
短期的には、前立腺がんの手術によって起こりやすい排尿や性機能の障害に差がなく、入院期間の短縮が見込める点で、ロボット手術の利点があると思われます。ただしロボット手術では触覚が術者に伝わらないこと、開腹手術では腸に触れずに前立腺に手が届くことなどは、開腹手術に有利な何らかの結果につながることも考えられます。
今後長期的なデータが積み重なることで、開腹手術とロボット手術の使い分けに新しい指針が作られていくかもしれません。現時点では、短期的な違いの情報としてすでに報告されているデータを参照することができます。
執筆者
Laparoscopic and robotic-assisted versus open radical prostatectomy for the treatment of localised prostate cancer.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Sep 12. [Epub ahead of print]
[PMID: 28895658]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。