2017.09.13 | ニュース

脳の活性化よりWiiのほうが効き、生活の質もよくなった

軽度認知障害の78人で比較

脳の活性化よりWiiのほうが効き、生活の質もよくなったの写真

「脳を鍛える」と称する製品は多く出回っていますが、認知症予防などにつながるかは不明な点が多く残っています。コンピュータを使う訓練の方法による違いが検討されました。

WiiとCoTrasはどっちが効くか?

韓国のヨンセ大学校の研究者らが、認知機能を狙ったコンピュータ訓練と、特定の機能を狙わないコンピュータ訓練を比較する研究を行い、結果を専門誌『Clinical Rehabilitation』に報告しました。

この研究は軽度認知障害のある78人を対象としています。対象者はランダムに2グループに分けられました。

  • CoTrasで訓練するグループ
  • 任天堂のWiiで訓練するグループ

CoTrasは韓国のネットブルー社による製品で、ゲームを通じて認知機能向上などを図るものです。CoTrasのグループは認知機能を狙った訓練を行い、Wiiのグループは特化しない訓練を行いました。訓練はどちらも1回30分、週に3回で10週間としました。

 

Wiiのほうが数字を言えた

10週間の訓練から次の結果が得られました。

10週後、ウェクスラー成人知能検査の下位検査(数唱の順唱0.48± 0.08 vs. 0.12 ± 0.04、逆唱0.46 ± 0.09 vs. 0.11 ± 0.04)および健康関連QoL(活力9.05 ± 1.17 vs. 2.69 ± 1.67、日常役割機能(精神)8.31 ± 1.20 vs. 4.15 ± 0.71、心の健康11.62 ± 1.63 vs. 6.95 ± 1.75、体の痛み4.21 ± 2.17 vs. 0.10 ± 0.38)は非特異的コンピュータ訓練群のほうが有意に高かった(P<0.05)。

認知機能のテスト(WAIS)をしたところ、Wiiのグループのほうが、数字を読み上げる問題の成績がよくなりました。また生活の質(QoL)を質問票で尋ねたところ、活力・心の健康・体の痛みなどがWiiのグループのほうがよくなりました。

 

何を鍛えているのか?

認知機能を狙った訓練よりも、特化しない訓練のほうが改善があったとする報告を紹介しました。

背景として、認知機能の訓練が認知症などを防ぐ効果ははっきりしていません。健康な人が認知機能の訓練をすると訓練した領域の改善があるといった報告があります。訓練の内容によっても結果に違いはあるかもしれません。

そのため、「CoTrasよりもWiiのほうが」「認知機能に特化するよりしないほうが」よいといった比較に一般化できるかどうかには検討の余地もあると考えられます。とはいえ、認知機能を「狙った」訓練が本当に結果に結び付くかどうかは、やはり不確かと言うべきでしょう。

認知症を予防したり元に戻したりする確実な方法はいまだ知られていません。むしろ、誰もがいつか認知症になるかもしれないという理解を前提に、家族や周りの人々が上手に受け入れられるような環境づくりを考えることも大切なのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Does cognition-specific computer training have better clinical outcomes than non-specific computer training? A single-blind, randomized controlled trial.

Clin Rehabil. 2017 Jul 1. [Epub ahead of print]

[PMID: 28726492]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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