乳がん術後の再建は自分の体を使うかインプラントを使うか?

乳房を取り除く手術は乳がんの代表的な治療法です。なくなった乳房を作り直す再建という手術もあります。再建の方法によって患者の感じ方に違いがあるかが調査されました。
手術前と1年後の感想を聞き取り
アメリカとカナダの研究班が、乳がんで乳房の再建をする人を対象に、手術前と手術から1年後に聞き取り調査を行い、結果を専門誌『Journal of Clinical Oncology』に報告しました。
調査ではBREAST-Q、PROMIS-29という2種類の質問票が使われました。どちらも個々の質問に対して数字で答える形式で、患者自身が感じている状態を尋ねるものです。
乳房の再建には、大きく分けて2種類の方法があります。
- 自分の体を使って再建する方法
- 人工物(インプラント)を使って再建する方法
自分の体を使う方法は、体の別の場所から組織を移動させて乳房の形を作ります。人工物を使う方法は、乳房の位置に人工物を挿入して形を作ります。
自分の体を使う方法は手術後の手触りが自然な感じになりやすく、人工物を使う方法は手術のための入院期間が短く手術自体の時間も短い傾向があります。
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研究には1,632人の患者が参加しました。1,139人が人工物、493人が自分の体を使う再建でした。うち1,183人が1年後の質問にも答えました。
自分の体を使う再建のほうが乳房に満足したが、痛みが気になった
回答の解析から次の結果が得られました。
研究開始時の値で解析を調整したところ、自家再建を受けた患者のほうがインプラントによる再建を受けた患者よりも1年時点で乳房に対して満足度が大きく(差6.3、P<0.001)、性的良好度が大きく(差4.5、P=0.003)、心理社会的良好度が大きかった(差3.7、P=0.02)。
不安とうつ
症状 は1年時点でどちらのグループでも軽減していた。研究開始時の自己申告に比べて、インプラントによる再建を受けた患者では疲労感が減り(差-1.4、P=0.035)、自家再建を受けた患者では痛みによる生活の妨げが増えていた(差2.0、P=0.006)。
1年後の質問では、自分の体を使う方法で再建した人のほうが乳房に対して満足している度合いが大きくなりましたが、痛みにより生活が妨げられると感じることが手術前よりも増えていました。対して人工物で再建した人では、手術前よりも疲労感が減っていました。
再建の方法はどう選ぶ?
乳房再建の方法による1年後の感想の調査を紹介しました。
どちらの方法にも一長一短がある結果でした。どの点を重視するかで人によって適した方法は違うと思われます。
また、この調査では対象とされていませんが、乳房を再建しないという選択肢もあります。乳房の形があまり変わらなかった人や、形が変わってもあまり違和感がなかった人では、再建したいと思わない人もいます。手術は入院などの負担になり、医学的なリスクも完全にゼロにはできないため、再建しないことも合理的な選択肢です。
個人差があるとはいえ、多くの女性にとって乳房を取り除くことは大きな変化です。再建の方法によって予想される結果の違いをよく知ることで、自分の感じ方に合った方法を選ぶための材料にすることができます。
執筆者
Patient-Reported Outcomes 1 Year After Immediate Breast Reconstruction: Results of the Mastectomy Reconstruction Outcomes Consortium Study.
J Clin Oncol. 2017 Aug 1.
[PMID: 28346808]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。