2016.07.13 | ニュース

乳房再建にはどの素材がいいか?

5件の研究結果から
from The Cochrane database of systematic reviews
乳房再建にはどの素材がいいか?の写真
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乳がんの手術のあと、乳房を元の形に近くする乳房再建術では、植え込んだインプラントの周りが炎症で硬くなってしまう被膜拘縮などが問題になります。インプラントの種類による違いがわかっているか、これまでの研究状況が調査されました。

◆乳房のインプラントと炎症、被膜拘縮

乳がんの手術では乳房の一部または全部を切り取ってしまうため、がんの治療に加えて乳房再建術も大切な治療になります。

乳房再建術ではシリコンなどで作られたインプラントを乳房に植え込んで形を作ります。インプラントは軟らかいので、乳房の上から触っても元の乳房に近い手触りになりますが、乳房再建術のあとしだいに硬くなってしまうことがあります。インプラントの周りに炎症が起き、硬い線維の組織ができてインプラントを包むカプセルのようになってしまうのが原因です。インプラントの周りにカプセル状の組織ができて硬くなることを被膜拘縮(ひまくこうしゅく)と言います。

 

◆これまでの研究は5件

ここで紹介する研究は、乳房再建術に使うインプラントの種類によって被膜拘縮などの結果に違いがあるか、これまでに研究されている内容を調査してまとめたものです。

文献の検索により、関係する5件の研究が見つかりました。

 

◆食塩水を入れるインプラントが被膜拘縮は少ないが、再治療も

見つかった5件の研究の対象者は次のような女性でした。

研究に参加した女性は主に50歳代であり、大多数(およそ82%)は乳がんのあとに再建手術を受け、残りの女性は予防的乳房切除術のあとに再建手術を受けていた。

50歳代を中心とする、5件で合計202人の女性が対象とされていました。対象者のうち82%は乳がんが見つかり、治療のため乳房を切り取った人でしたが、残りの人は乳がんが見つかる前に予防的に乳房を切り取った人でした。

5件の研究の中で、次の結果が報告されていました。

食塩水を詰めたインプラントはシリコンを詰めたインプラントよりもいくつかの帰結についてよりよい結果を示した。特に、食塩水を詰めたインプラントは重症の被膜拘縮がより少なく(リスク比3.25、95%信頼区間1.24-8.51、1件の研究、60人の参加者、非常に低い質のエビデンス)、患者の満足度を増した(リスク比0.60、95%信頼区間0.41-0.88、1件の研究、58人の参加者、非常に低い質のエビデンス)。しかし、再治療はシリコンを詰めたインプラントよりも食塩水を詰めたインプラントのほうがより多かった(オッズ比0.08、95%信頼区間0.01-0.43、1件の研究、60人の参加者、非常に低い質のエビデンス)。

インプラントの内部を食塩水で満たすタイプのものとシリコンが詰まっているタイプのものを比べると、食塩水を入れるインプラントのほうが重度の被膜拘縮が少ない一方で、再治療が必要になる場合はシリコンが詰まっているインプラントよりも多く発生していました。

ほかにもインプラントの種類による比較の結果が報告されていましたが、以下の比較では統計的に差が確かめられない結果でした。

  • 表面を加工したシリコンと表面がなめらかなシリコンの比較
  • PVPヒドロゲルを詰めたインプラントと食塩水を詰めたインプラントの比較
  • 解剖学的インプラントと丸いインプラントの比較
  • 体積可変型インプラントと体積固定型インプラントの比較

研究班は見つかった研究の状況について「乳がんができた女性にとって乳房再建は中心的な役割があるにもかかわらず、乳房再建術で使うのに最良のインプラントは、ランダム化研究の文脈ではほとんど研究されてきていない」とまとめています。

 

乳がんはがんの中では早期発見しやすく、適切な時期に手術できれば10年以上の生存もかなりの確率で期待できます。手術後の生活が長くなる分、乳房再建術によって大きな影響を受けます。

インプラントの研究はこれからの乳がん研究の中でさらに重要になってくるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Different types of implants for reconstructive breast surgery.

Cochrane Database Syst Rev. 2016 May 16.

[PMID: 27182693]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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