妊娠初期にインフルエンザワクチンを打っても子供に影響はない?
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ワクチンの中には妊娠中に打ってはいけないとされるものがありますが、インフルエンザワクチンは妊娠週数にかかわらず打ってよいと考えられています。生まれる子供への影響が調査されました。
妊娠初期のインフルエンザ不活化ワクチンと乳児の先天形態異常の関係
アメリカの研究班が、インフルエンザワクチンの影響について調べた結果を専門誌『Journal of Pediatrics』に報告しました。
この研究は、アメリカ7か所の施設で得られた、ワクチンによるまれで深刻な被害を探すためのデータを解析し、妊娠初期にインフルエンザワクチンを打つことで子供の主な先天形態異常に影響がないかを調べています。
なお、ここではインフルエンザ不活化ワクチンを調査対象としています。不活化ワクチンは日本でも一般的に使われているタイプのワクチンです。アメリカではインフルエンザ生ワクチン(鼻からスプレーして使うタイプ)も使われていますがこの調査には含まれていません。
主要な先天形態異常に差がない
母親が妊娠初期にインフルエンザワクチンを打っていた52,856人の子供のデータが見つかりました。比較のため、母親が妊娠初期にインフルエンザワクチンを打っていなかった373,088人の子供のデータとあわせて解析しました。
解析から次の結果が得られました。
選択した主要な先天形態異常の有病率は、妊娠初期にインフルエンザ不活化ワクチンの使用があった母親で生産100人あたり1.6人、使用がなかった母親で1.5人だった。調整有病率比は1.02(95%信頼区間0.94-1.10)だった。
主要な先天形態異常は、ワクチンを打っていなかった場合で100人あたり1.5人、打っていた場合で100人あたり1.6人であり、統計的に差が確かめられませんでした。
妊娠初期でもインフルエンザワクチンは打っていい?
妊娠初期のインフルエンザワクチンと子供の先天形態異常の関連がないとした報告を紹介しました。
ほかにも多くの研究で妊娠中のインフルエンザワクチンの安全性は検証されています。妊娠中はただでさえ体に負担がかかっている時期なので、インフルエンザを防げることは母子両方にとってよいことです。
米国予防接種諮問委員会 (ACIP) は、妊娠期間がインフルエンザシーズンと重なる女性に対して、妊娠の週数にかかわらずワクチンを打つことを勧めています。
もし妊娠に気付かないで妊娠初期にインフルエンザワクチンを打ったとしても、子供への影響を心配する必要はありません。
対して妊娠中は一般に、麻疹(はしか)・風疹などの生ワクチンを打つべきではないとされています。一方で、妊娠中に風疹にかかると、数%ほどの割合で子供の先天性風疹症候群が引き起こされます。このため妊娠を希望した時点で予防接種の計画を立て、予防接種が済んでから妊娠することが望ましいと言えます。
ワクチンは母親と子供の健康のために大きな意味があります。注意点を知って正しく利用し役立ててください。
執筆者
First Trimester Influenza Vaccination and Risks for Major Structural Birth Defects in Offspring.
J Pediatr. 2017 May 24. [Epub ahead of print]
[PMID: 28550954]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。