2017.06.29 | ニュース

視力低下を起こす糖尿病黄斑浮腫の薬はどれが効く?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

視力低下を起こす糖尿病黄斑浮腫の薬はどれが効く?の写真

視力低下などを起こす糖尿病黄斑浮腫の治療薬として、アフリベルセプト(商品名アイリーア®)やラニビズマブ(商品名ルセンティス®)があります。薬ごとの効果の違いが、これまでに報告されているデータから検討されました。

イタリアの研究班が、糖尿病黄斑浮腫に対する治療薬の効果について文献のデータをもとに調べ、『Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。

この研究は、抗VEGF抗体に分類される治療薬を対象としています。

糖尿病黄斑浮腫に対して使われる抗VEGF抗体として、アフリベルセプト(商品名アイリーア®)、ラニビズマブ(商品名ルセンティス®)、ベバシズマブ(商品名アバスチン®、日本では糖尿病黄斑浮腫に対して未承認)などがあります。このうち日本でも使われているのはアフリベルセプトとラニビズマブです。

糖尿病黄斑浮腫の治療薬には、ほかにトリアムシノロンアセトニド(商品名マキュエイド®)があります。トリアムシノロンアセトニドはステロイド薬に分類されます。薬以外の治療法としてはレーザー治療などがあります。

糖尿病黄斑浮腫では視力低下などの症状が現れます。抗VEGF抗体は視力低下を抑える目的で使われます。この研究は、糖尿病黄斑浮腫に対して抗VEGF抗体の効果と副作用を試した過去の研究報告を集め、内容をまとめて解析したものです。

研究班は、複数の治療法の効果を比較できるネットワークメタアナリシスという統計手法を使って、薬ごとの違いを検討しました。

 

採用基準を満たす24件の研究が集まりました。アフリベルセプトについて3件、ベバシズマブについて8件、ラニビズマブについて14件の研究がありました。

1年後の視力で比較すると以下の結果が得られました。

  • アフリベルセプトはレーザーに比べて平均logMARで0.20の改善(高い質の証拠)
  • ベバシズマブはレーザーに比べて平均logMARで0.12の改善(中等度の質の証拠)
  • ラニビズマブはレーザーに比べて平均logMARで0.12の改善(高い質の証拠)
  • アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブの間で全身の深刻な有害事象に差はない(中等度または高い質の証拠)

logMARは視力の指標です。日本でよく使う表記(少数視力)で言うと1.0がlogMAR 0.0、0.1がlogMAR 1.0、0.01がlogMAR 2.0に対応します。

有害事象とは、副作用などによる治療中の望ましくない出来事を指します。

 

糖尿病黄斑浮腫に対して、抗VEGF抗体どうしの比較ではアフリベルセプトが1年後の視力に高い効果を示したという報告を紹介しました。

この報告は、糖尿病黄斑浮腫に対して抗VEGF抗体で治療しようとするときの参考にできるかもしれません。ただし、糖尿病黄斑浮腫の治療法はほかにもあり、抗VEGF抗体を使うときに注意するべき点もあります。

たとえば抗VEGF抗体は硝子体内注射という方法で使用します。硝子体内注射は眼球の中に薬剤を注射する方法です。十分な経験のある眼科医が行うべき治療です。また薬剤により引き起こされる可能性があることとして、心筋梗塞、脳卒中等が考えられています。深刻な事態に至ることはまれと考えられますが、どんな治療でも利益と害のバランスを考えて選ぶべきであり、効果だけでは判断できません。

いくつかの面を見比べて判断するために、実際に研究で試された効果が数値で比較可能になっていることには価値があります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Anti-vascular endothelial growth factor for diabetic macular oedema: a network meta-analysis.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun 22. [Epub ahead of print]

[PMID: 28639415]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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