巨大結腸症で救急受診した44歳男性
テキサス州ヒューストンの医師らが、神経の損傷による巨大結腸症により目立った症状が現れた44歳男性の写真と映像を、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。
この男性は、以前に首を銃で撃たれたことで四肢麻痺の状態になり20年を過ごしていました。
20年間に巨大結腸症などで繰り返し入院していました。
巨大結腸症は、大腸の一部(結腸)が大きく広がっている状態です。ほかの病気では腸閉塞により結腸に内容物がたまるなどして大きく広がる場合があります。巨大結腸症は、腸が狭くなるなどの機械的な原因がないにもかかわらず腸が広がった場合を指します。
大腸が太さ18cmに、薬で治療
報告されている救急受診時の状態は、腹部が大きく膨らみ、体の表面から腸が極端に大きく広がってゆっくり運動する様子が見えているというものでした。
CTを撮影したところ、大腸の内径(太さ)が最大18cmにまで広がり、また腸の動きが悪くなっていたことにより便がたまっている様子も見つかりました。
便を柔らかくする薬、出しやすくする薬(緩下剤)が処方され、またこの患者への指示として、腸の運動を妨げる薬は避けるように伝えられました。
巨大結腸症とは?
巨大結腸症が現れた人の例を紹介しました。この男性の写真と映像は「参照文献」のリンク先で見られます。
神経の損傷が巨大結腸症を引き起こす場合があります。アメリカから報告されたこの男性では銃で撃たれたことが背景でしたが、けがで脊髄(せきずい)などの重要な神経が傷付くことは日本でも珍しくありません。
巨大結腸症は治療しなければ悪化する場合もあります。大腸を取り除く手術なども治療選択となります。
脊髄損傷などで傷付いた神経を元に戻す治療法は知られていません。損傷の状態によっては麻痺などの症状を持って長年過ごすことになります。楽ではない生活ですが、問題が起こればその都度対処することはできます。上に紹介した男性は内科的治療で足りると判断され、すぐに手術はせずに済みました。
臓器の機能や、損傷により将来予想される問題を理解しておくことは大切です。一見激しい症状が現れたときも落ちついて医療機関に相談することで、前向きに治療に取り組むことができます。
執筆者
Neurogenic Megacolon in Spinal Cord Injury.
N Engl J Med. 2016 Dec 1.
[PMID: 27959751] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1604013※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。