脊髄損傷後に車椅子を使用する人の肩の痛みを運動療法で改善できるか
脊髄損傷は、運動障害が強く残り、車椅子を必要とすることがあります。今回の研究は脊髄損傷後に、車椅子を使用することで生じる肩の痛みが、運動療法(リハビリテーション)で改善するか検証しました。
◆7つの研究論文からデータ分析
脊髄損傷によって歩行が困難となった場合、両腕で車椅子の車輪(ハンドリムといいます)を漕ぎながら前進することで、自力での移動が可能となります。腕を動かし続けると、肩関節に負担が重なり、肩の痛みと関連する可能性があります。
今回の研究チームは、過去の7つの研究論文をまとめ、脊髄損傷後に車椅子の使用による肩の痛みが、運動療法によって改善するかを検証しました。
◆運動療法により肩の痛みは改善する
以下のことが分かりました。
調査した7つの研究全体を通して、運動療法による介入によりWheelchair Users’ Shoulder Pain Indexは、推定された最小化可検変化量の5.1ポイントを上回るほど、肩の痛みを軽減していた。
運動療法(リハビリテーション)を行うことにより、車椅子を漕ぐことで起きた肩の痛みは改善するという結果でした。
脊髄損傷の後、自立した日常生活を送るために車椅子が移動手段となる場合があります。しかし、車椅子駆動による腕の負担が、肩の痛みにつながることは大きな問題です。肩の痛みを取り除く治療法は、脊髄損傷後に自立生活を継続するうえでは非常に有用かもしれません。今後は、さらに具体的に肩の痛みに対して有効な治療法が検証されることを期待します。
執筆者
Effectiveness of Exercise Programs for Management of Shoulder Pain in Manual Wheelchair Users With Spinal Cord Injury.
J Neurol Phys Ther. 2015 Oct
[PMID: 26308939]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。