プラチナ製剤感受性の再発卵巣がんに対するニラパリブの効果
国際研究により、ニラパリブの効果を調べた結果が医学誌『New England Journal of Medicine』に報告されました。
この研究では、対象として、卵巣がん患者のうちプラチナ製剤(抗がん剤の一分類)で治療に反応が見られ、治療後に再発があった人が選ばれました。
対象者は、生まれつきの遺伝子によってグループ分けされました。乳がんや卵巣がんの危険性を増すとされる、BRCA遺伝子の変異(生殖細胞系変異)があるかないかを基準としました。
BRCA生殖細胞系列変異があるグループ、ないグループのそれぞれが、ランダムに2グループに分けられました。一方はニラパリブを1日1回飲むグループ、もう一方は有効成分のない偽薬を1日1回飲むグループとされました。
進行なく生存する期間が延長
次の結果が得られました。
ニラパリブ群の患者は偽薬群に比べて無増悪生存期間の中央値が有意に長く、gBRCAコホートでは21.0か月 vs 5.5か月(ハザード比0.27、95%信頼区間0.17-0.41)、[...]non-gBRcAコホート全体では9.3か月 vs 3.9か月(ハザード比0.45、95%信頼区間0.34-0.61、3種類の比較すべてについてP<0.001)だった。
BRCA生殖細胞系列変異があるグループのうち、がんが進行することなく生存した期間は、偽薬のグループでは半数の人が5.5か月以上、ニラパリブのグループでは半数の人が21.0か月以上でした。
BRCA生殖細胞系列変異がないグループのうち、がんが進行することなく生存した期間は、偽薬のグループでは半数の人が3.9か月以上、ニラパリブのグループでは半数の人が9.3か月以上でした。
つまり、遺伝子変異がある人でもない人でも、ニラパリブを使ったグループのほうが進行なく生存する期間が長くなりました。
副作用については次の結果でした。
ニラパリブ群で最も頻繁に報告されたグレード3または4の有害事象は、血小板減少(33.8%)、貧血(25.3%)、好中球減少(19.6%)であり、用量調整によって管理された。
副作用の可能性がある症状などのうち、入院が必要な重症度で最も多く見られたものは、血小板減少・貧血・好中球減少でした。いずれも血液中の細胞(血球)が減る状態です。
抗がん剤の中には、副作用により血球減少を起こしやすい種類のものもあります。
ここでニラパリブを使ったグループに起こった事態は、用量を調整することで対処できる範囲でした。
ニラパリブは再発卵巣がんの治療になるか?
ニラパリブを使ったグループで改善の結果が得られました。
ニラパリブは2016年12月に米食品医薬品局(FDA)から優先審査品目に指定されました。日本では未承認です。
もし将来ニラパリブが実際に使われるようになり、ほかの選択肢よりも優れていると考えられる面が認められれば、卵巣がんの再発後の治療として役に立てるかもしれません。
執筆者
Niraparib Maintenance Therapy in Platinum-Sensitive, Recurrent Ovarian Cancer.
N Engl J Med. 2016 Dec.
[PMID: 27717299]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。