アトピー性皮膚炎に対するデュピルマブの効果
デュピルマブの効果を調べた研究の結果が、医学誌『New England Journal of Medicine』に掲載されました。同じ方法による2件の研究として別々に行われた結果がまとめて報告されています。
対象者として、中等度から重度のアトピー性皮膚炎があり、以前に塗り薬などの局所治療を受けたにもかかわらず十分な効果が得られなかった成人が選ばれました。
対象者はランダムに3グループに分けられました。
- 有効成分を含まない偽薬の注射を毎週打つグループ
- 1週ごとにデュピルマブと偽薬の注射を交互に打つグループ
- 毎週デュピルマブの注射を打つグループ
改善の度合いを重症度のスコア(IGAスコア)で評価しました。IGAスコアは0から5までの6段階で、数字が大きいほうが重症です。0は症状が消えた状態、1は赤みなどの症状がやっと見つけられる程度の状態です。
治療開始から16週で次の両方を満たすことを目標(一次アウトカム)としました。
- IGAスコアが治療前から2点以上改善している。
- IGAスコアが0または1になっている。
ほかの指標として、症状のある面積と重症度の掛け算で計算される「EASI」などのスコアが使われました。
重症度が90%改善などの効果
16週の治療後に次の結果が得られました。
SOLO1研究では、一次アウトカムはデュピルマブ隔週の群で85人(38%)の患者に、デュピルマブ毎週の群で83人(37%)に起こり、対して偽薬群では23人(10%)に起こった(偽薬との比較の両方においてP<0.001)。SOLO2研究において結果は類似し、一次アウトカムはデュピルマブ隔週群の患者84人(36%)、デュピルマブ毎週群の87人(36%)、対して偽薬群の20人(8%)に起こった(両方の比較においてP<0.001)。
目標とした水準以上の改善は、偽薬を注射したグループでは8%から10%の人で、対してデュピルマブを注射したグループでは36%から38%の人で達成されました。
EASIのスコアに90%以上の改善があった人の人数は以下のとおりでした。
- 第1の研究
- 偽薬:224人中17人
- デュピルマブ2週ごと:224人中80人
- デュピルマブ毎週:223人中74人
- 第2の研究
- 偽薬:236人中17人
- デュピルマブ2週ごと:233人中70人
- デュピルマブ毎週:239人中73人
副作用について次の結果がありました。
注射部位反応と結膜炎が、デュピルマブ群で偽薬群よりも頻繁に見られた。
デュピルマブによる副作用の可能性があることとして、注射した場所にとどまる反応、結膜炎などが報告されました。
まとめ
アトピー性皮膚炎に対するデュピルマブの効果を示す結果が得られました。ほかの薬で十分に効果が出ない人の助けになるかもしれません。
執筆者
Two Phase 3 Trials of Dupilumab versus Placebo in Atopic Dermatitis.
N Engl J Med. 2016 Sep 30. [Epub ahead of print]
[PMID: 27690741]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。