アトピー性皮膚炎に対する保湿剤の効果
文献を調査する方法で、アトピー性皮膚炎に対する保湿剤の効果として過去に報告されている内容をまとめた研究を紹介します。
この研究では、研究データベースを2015年12月の範囲まで検索し、関係する研究報告を集めました。アトピー性皮膚炎の患者を対象として、保湿剤を使うか使わないかをランダムに割り当てる方法の研究(ランダム化対照試験)を選びました。
症状がわずかに改善
採用基準を満たす77件の研究が見つかりました。
データを解析した結果、保湿剤を使うことで重症度のスコア(SCORAD)がわずかに改善すると見られました。
副作用の可能性があるヒリヒリ感、かゆみ、赤み、毛包炎などの数は、保湿剤を使わない場合と比べて統計的に違いが見られませんでした。
尿素を含むクリームを使った人は、皮膚の状態がよくなったと自己申告する割合がわずかに増えましたが、副作用の可能性がある症状などもわずかに増えると見られました。
グリセロール(グリセリン)を含む保湿剤を使った人は、重症度のスコアがわずかに改善し、皮膚の状態がよくなったと感じることもわずかに増える一方、副作用の可能性があることの数は保湿剤を使わない場合と違いが見られませんでした。
研究班は「ほとんどの保湿剤は[...]何らかの有益な効果を示した。どれかの保湿剤がほかのものより優れているという信頼できる証拠は見つからなかった」と結論しています。
まとめ
アトピー性皮膚炎に対して、保湿剤の効果は医学研究の結果としても確かめられていました。
アトピー性皮膚炎では、皮膚がかゆくて掻く、掻くと皮膚が傷付いてますますかゆくなるという悪循環も起こりがちです。保湿剤などを使って皮膚の状態をよくすることには意味があると考えられます。
保湿剤がすべての患者に有効というわけではありません。また、保湿剤だけで完治を期待することは必ずしも正しくありません。必要なときに必要なだけ薬を使うことは大切です。
治療の中にうまく保湿剤も取り込むことで、少しでも症状を楽にしたい人の役に立つかもしれません。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。