米政府機関の調査
アメリカの政府機関であるアメリカ食品医薬品局(FDA)と疾病管理予防センター(CDC)の研究班が、コンタクトレンズによって起こった問題の報告を集計しました。
コンタクトレンズに関連して発生した問題(有害事象)はFDAに報告されています。
研究班は、コンタクトレンズの有害事象のデータベースから、”ulcer”(潰瘍)または”keratitis”(角膜炎)という言葉が出てくる報告を検索して集めました。
2005年から2015年に報告された有害事象のうち、1,075件の報告が見つかりました。
処方箋なしのレンズで16件
見つかった報告を、レンズの種類ごとに分類すると次のようになりました。
- 日中つけるソフトレンズで起こった有害事象:615件(57.2%)
- つけたまま寝られるタイプのソフトレンズで起こった有害事象:381件(35.4%)
- 1日で使い捨てるソフトレンズで起こった有害事象:36件(3.3%)
- 硬性通気型レンズ(ハードレンズ)で起こった有害事象:43件(4.0%)
- ファッション用レンズ(度なし)で起こった有害事象:33件(3.1%)
- 処方箋なしで買ったコンタクトレンズに起こった有害事象:16件(1.5%)
入院25件、角膜移植47件
有害事象によって治療が必要とされた事例として、次のものが報告されていました。
- 病院の救急部または救急クリニックに行った報告:130件(12.1%)
- 入院になった報告:25件(2.3%)
- 中心角膜瘢痕、視力低下などが起こった報告:213件(19.8%)
- うち角膜移植が必要になった報告:47件(4.4%)
使用期限切れで85件
問題を起こしやすいと考えられた状況について調べると、次の報告が見つかりました。
- 常にレンズをつけているか、眠るときもレンズをつけている:121件(11.3%)
- 使用期限を超えてつける:85件(7.9%)
解釈
アメリカでは数千万人の人がコンタクトレンズをつけています。ここで取り上げられた事例は11年分をすべて合わせても1,000件あまりです。たとえレンズをつけたまま眠ったとしても、コンタクトレンズによる潰瘍や角膜炎は非常にまれと言えます。
むしろ、いつもレンズをつけて寝ていた人は、報告の中でも1割あまりにとどまりました。ほかの原因はなかなか予測しにくいと思われます。
処方箋なしで買ったレンズにも問題の報告がありました。どの程度危険なのかは使用者に占める割合で比較しなければわかりませんが、処方箋なしでは適切なレンズを選べる保証はなく、万一何かあったとしてもケアはありません。
危険な要素をなるべく減らしたうえ、予測できない出来事にも適切に対処できるよう、眼科の医師と相談しながらコンタクトレンズを使うのが正しい使い方と言えるでしょう。
執筆者
Contact Lens-Related Corneal Infections - United States, 2005-2015.
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2016 Aug 19.
[PMID: 27538244]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。