◆虫除け成分「ディート」「イカリジン」が注目されている理由
蚊が媒介する感染症は現在も大きな脅威です。今も毎年数十万人がマラリアで死亡しています。リオデジャネイロオリンピックを間近に控えているブラジルなどでは、ジカ熱による妊娠・出産への影響が問題となっています。感染症対策として、虫除け剤を使って蚊に刺されないようにすることがきわめて重要です。
厚生労働省は2016年6月15日に、従来販売されている虫除け剤よりも有効成分の「ディート」「イカリジン」を多く含む製品について迅速審査を行うことを通知しました。
◆全米15年のデータを集計
ここで紹介する研究は、全米中毒データシステム(NPDS)に報告された、虫除け剤を誤って飲んだ事故について集計したものです。
研究班は、2000年1月から2015年5月までの事故報告のうち、ディートを含むもの、イカリジンを含むものなどを集計して、虫除け剤を飲んだ人に発生した症状などをまとめました。
◆重大な作用の例なし
次の結果が得られました。
68,429件の曝露が発生した[...]重大な作用や死亡の例はなく、中等度の作用が1例あるだけだった。すべての除虫剤曝露に共通して主要な症状は、目の刺激/痛み、嘔吐、目の充血/結膜炎、口の刺激だった。治療は主に希釈/灌水/洗浄だった。
調査期間中に事故は68,429件発生していましたが、虫除け剤を飲んで死亡や重大な作用に至った例はありませんでした。1件のみ、治療を必要とするが命に別状はなく、後遺症もない中等度の作用が発生していました。
虫除け剤を飲んで発生した主な症状は目の痛みや充血、嘔吐、口の刺激などで、主に水で薄めたり洗い流したりすることで対応され、重大な結果に至ることはありませんでした。
ディートやイカリジンを含む虫除け剤を飲んでも大きな害はなかったという結果でした。
日本の衛生状態はきわだって改善しましたが、ブラジルやアメリカほか、多くの国で蚊が媒介する感染症はまだまだ流行しています。オリンピックはもちろん、夏休みに海外旅行の予定がある方は虫除け剤も忘れずに準備してください。
執筆者
The toxicity of picaridin containing insect repellent reported to the National Poison Data System.
Clin Toxicol (Phila). 2016 May 23. [Epub ahead of print]
[PMID: 27213820]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。