◆政府機関が文献を調査
アメリカの政府機関である医療品質研究調査機構(AHRQ)は、成人の2型糖尿病に対して使われる治療薬の効果と副作用を評価するため、これまでに行われた研究報告を集めて比較しました。
◆DPP-4阻害薬で効果が小さく、GLP-1阻害薬、SGLT2阻害薬に独特の副作用
見つかった216件の研究から、血糖値を下げる効果について次の結果が得られました。
HbA1cの減少量はすべての単剤治療の比較において類似し、メトホルミンを基本とした多剤併用治療の比較でも類似していたが、DPP-4阻害薬はメトホルミンよりも減少量が小さかった。
血糖値の指標であるHbA1cの検査値で見ると、血糖値を改善してHbA1cを減らす効果はDPP-4阻害薬(商品名:ジャヌビア®、グラクティブ®など)が小さく、ほかの薬では同程度の効果があると見られました。
長期的な効果について次の結果が得られました。
研究期間が2年を超える研究において、心血管死亡率はスルホニルウレアのほうがメトホルミンよりも50%から70%高かった(ランダム化試験においてリスク差0.1%から2.9%)。
SU剤(商品名:オイグルコン®、ダオニール®、グリミクロン®、アマリール®など)よりも、メトホルミン(商品名:メトグルコ®など)のほうが心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患による死亡率が低く、治療した人1000人あたりの死亡数で1人から29人程度の差があると見られました。
副作用について次の結果が得られました。
スルホニルウレアを基本とした治療は、ほとんどの比較において低血糖全体および重症の低血糖のリスクの増加させた。胃腸の有害事象はGLP-1阻害薬を除くほかの薬剤よりもメトホルミンで多く、GLP-1阻害薬はメトホルミンよりも吐き気・嘔吐を1.5倍増加させた。SGLT2阻害薬は陰部真菌感染症のリスクをほかの薬剤よりも増加させた。
メトホルミンでは胃腸の副作用があると見られました。
SU剤には血糖値が一時的に下がりすぎてしまう低血糖の副作用が多いと見られました。
GLP-1阻害薬(商品名:ビクトーザ®、バイエッタ®など)には吐き気・嘔吐の副作用がメトホルミンよりもさらに多いと見られました。
SGLT2阻害薬(商品名:スーグラ®など)では陰部の真菌(カビの仲間)による感染症が増えると見られました。
これらの結果をもとに、研究班は「[...]メトホルミンのHbA1c、体重、心血管死亡率(スルホニルウレアに比べて)に対する有益な効果および相対的に安全な面から、メトホルミンが第一選択として支持される」と結論しています。
最近登場したDPP-4阻害薬、GLP-1阻害薬、SGLT2阻害薬に比べて、古くから広く使われているメトホルミンは費用面でもメリットがあります。ここで公共機関による見解が示されたことで、医師の個々の判断にも影響があるかもしれません。
執筆者
Diabetes Medications for Adults With Type 2 Diabetes: An Update
AHRQ Comparative Effectiveness Reviews. 2016 Apr.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27227214※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。