2016.06.15 | ニュース

糖尿病による失明を防ぐ薬、低血糖を起こしにくい薬

イングランド46万人の追跡データから

from BMJ (Clinical research ed.)

糖尿病による失明を防ぐ薬、低血糖を起こしにくい薬の写真

血糖値を下げる飲み薬は、種類によって効く仕組みや副作用が違い、効果を高めるために組み合わせて使うこともあります。薬の種類による治療結果の違いが検討されました。

◆46万人の治療結果は?

ここで紹介する研究は、2007年から2015年にかけてイングランドで2型糖尿病の成人患者469,688人を対象に行われた追跡調査のデータを解析したものです。

対象者はそれぞれ状態に応じた治療を受け、糖尿病の治療にどの種類の薬を使われたかで分類されて、使った薬の違いによって治療結果に違いがあるか、統計解析により検討されました。

2型糖尿病によく使われる薬として、メトホルミン、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬などがあります。共通の副作用として、血糖値が下がりすぎて失神などを起こす低血糖があります。

メトホルミンは古くから知られ、現在も多くの場合に標準的に使われています。DPP-4阻害薬は最近開発された薬で、低血糖を比較的起こしにくいと言われています。

糖尿病で血糖値が高い状態が続くと失明などの合併症の危険があるので、薬の治療では血糖値を下げて合併症を防ぎ、低血糖はなるべく起こさないようにすることが目標になります。

 

◆グリプチンは低血糖が少ない

次の結果が得られました。

グリタゾンを使用することは、使用しない場合に比べて失明のリスク減少(調整ハザード比0.71、95%信頼区間0.57-0.89、曝露10,000人年あたり14.4件の率)、低血糖のリスク増加(1.22、1.10-1.37、65.1)と関連した。グリプチンは低血糖のリスク減少と関連した(0.86、0.77-0.96、45.8)。

チアゾリジン薬であるグリタゾンを使ったときは、使わないときよりも失明が少なくなっていた一方で、低血糖は多くなっていました。DPP-4阻害薬にあたるグリプチンを使ったときは、グリプチンを使わないでほかの薬で治療したときに比べて、低血糖が少なくなっていました

 

複数の薬を組み合わせて血糖値をより確実に低く保つことが、失明などの合併症を防ぐことになります。一方で、血糖値が下がりすぎる危険性は増すことになります。また、グリプチンが低血糖を起こしにくい特徴もデータに表れているようです。

実際に使われたデータから薬の特徴をより確かに把握することで、ひとりひとりの患者に適した薬を選ぶ役に立ちます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Diabetes treatments and risk of amputation, blindness, severe kidney failure, hyperglycaemia, and hypoglycaemia: open cohort study in primary care.

BMJ. 2016 Mar 30.

[PMID: 27029547]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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