シワ取りのためのボツリヌス注射、本当に細い針の方が痛くない?

ボツリヌス注射は筋肉の働きを和らげる物質を注射する治療です。額や眉間のシワを取り除くためにボツリヌス注射をする際、細い針とさらに細い針のどちらでより痛みを感じるかが調べられました。
◆太さの異なる針で額の両側に注射
アメリカの研究班は針の太さの違いと痛みの程度を比較するため、額と眉間に中等度のシワを持つ20~75歳の健康な女性20人を対象に、実験を行いました。
本実験では、被験者の額の片側に細い30ゲージ針(外径およそ0.32mm)、反対側にさらに細い32ゲージ針(外径およそ0.27mm)を用いてA型ボツリヌス毒素を含む生理食塩水を注射しました。いずれの針も一般的に用いられているものと比べると大変細いので、「非常に細い針」と「それよりもさらに細い針」を比較していることになります。
また左右の上腕内側に、2種類の針で、A型ボツリヌス毒素を含まない生理食塩水を注射しました。
研究班は額、腕について左右それぞれの痛みの程度、強い痛みを感じた人の割合、そして痛みの特徴に関する情報を集め、解析しました。
◆平均値に差はない
次のような結果が得られました。
20人の患者全員が実験を完遂した。顔及び腕への注射は、30ゲージ針を用いた場合の方が痛みの値はより大きかったものの、32ゲージ針との間に
有意 な差は認められなかった(顔における平均[分散]VASは30ゲージ針で4.16[2.55]、32ゲージ針で 3.41[2.31]、 P =0.34; 腕においては1.66[2.07]、 1.21[1.65]、 P=0.45)。顔への注射において、臨床的に意義のある痛み(VAS ≥5.4)を生じる可能性は、30ゲージ針を用いた場合は8人(40%)、 32ゲージ針を用いた場合は3人(15%)と、30ゲージ針の方が有意に高かった(オッズ比3:80、 95%信頼区間1.05-13.78; P = 0.04)。
異なる細さの30ゲージ針と32ゲージ針を比較しても痛みの大きさの平均値に差は認められませんでした。一方32ゲージ針を用いた場合の方が、特に強い痛みを感じる頻度が高いということが示されました。
このように、すでに十分細い針を用いている場合、さらに針を細くしても痛みの大きさは平均として変わらないという結果になりました。30ゲージの針を使うよりもさらに痛みを抑えるには、針を細くする以外の方法が必要になるようです。
施術で感じる痛みの研究が進めば、患者の感じる負担をより一層軽減することができるかもしれません。
執筆者
Effect of Needle Size on Pain Perception in Patients Treated With Botulinum Toxin Type A Injections: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Dermatol. 2015 Nov.
[PMID: 26352252]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。