2016.02.19 | ニュース

心の状態で前十字靭帯損傷の手術後の回復度が変わる?

前十字靭帯損傷の手術を受けた64人を対象に検証

from The American journal of sports medicine

心の状態で前十字靭帯損傷の手術後の回復度が変わる?の写真

前十字靭帯を損傷した場合、手術が主な治療です。手術後の回復度には個人差があります。精神の状態が前十字靭帯損傷の手術後の回復に影響するか調べられました。

◆うつ病は前十字靭帯手術後の回復度に影響するのか?

今回の研究は、前十字靭帯を損傷して手術を受けた64人が対象となりました。対象者のうつ症状を調べるため、手術前、手術6週間後、12週間後、24週間後、そして、1年後にうつ症状のアンケートが行われました。そして、対象者は、このアンケート結果を基に、うつ病がある人(27人)とない人(37人)に分けられました。うつ病がある人とない人で自己評価した膝関節機能に違いがあるか調べられました。

 

◆うつ病があると回復度が変わる

次の結果が得られました。

どちらのグループでも手術前と比べてリショルムスコア、IKDCスコアが向上したが、1年後では、うつ病がないグループの平均スコアに比べてうつ病があるグループの平均リショルムスコア(75.2 vs 88.4; P=0.04)とIKDCの平均スコア(71.8 vs 89.3; P=0.001)は有意に低かった。

興味深いことに、うつ病があるグループの4人の患者(15%)に合併症が起きたのに対して、うつ病がないグループに合併症は起こらなかった。

うつ病を持っていると、手術1年後に自己評価した膝関節機能の回復度が低いことが報告されました。さらに、うつ病があるグループの患者の15%で治療にともなう問題が起こったのに対して、うつ病がないグループでは1件も起こらなかったことも報告されました。

 

うつ病があると、けがをした時に長期的な回復度が低くなってしまう可能性があります。さらに、ほかの病気やけがを起こしてしまうかもしれません。早期回復を目指すためには身体の状態だけではなく、心が健康な状態であることも重要かもしれません。

執筆者

宮本 望都喜

参考文献

Depression Symptomatology and Anterior Cruciate Ligament Injury: Incidence and Effect on Functional Outcome-A Prospective Cohort Study.

Am J Sports Med. 2015 Dec 1. [Epub ahead of print]

[PMID: 26628516]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る