◆刺青の中に怪しいものがあった
このブルガリアの42歳の男性は、顔のかゆみなどの症状で受診し、診察で全身の皮膚を観察されました。症状は脂漏性皮膚炎という、塗り薬などで治療できるものと見られましたが、ほかに黒いほくろのようなものが見つかりました。
この人の背中のほぼ全体、腕、胸にわたって、竜の刺青が彫られていました。見つかったほくろのようなものは刺青を彫る前からあり、刺青はその部分を避けて周りに彫られていました。観察した様子から、皮膚の病気が疑われました。
◆刺青の中のメラノーマ
手術で切り取って調べたところ、皮膚がんの一種である表在拡大型の悪性黒色腫(メラノーマ)だったことがわかりました。がんは早期のものでした。報告時点まで再発は起こっていません。
研究班は以前にも刺青の中にがんが見つかった例が多く報告されていることに触れ、刺青ががんの原因になる可能性についての仮説を列挙しています。
- 染料に毒性がある
- 染料が紫外線に反応して酸化ストレスを引き起こす
- 慢性炎症反応のため
- 皮膚に傷が付くことが刺激になる
- 刺青を彫る工程で、ほかの場所からがん細胞が持ち込まれる
さらに、刺青がある人の診察について、「悪性転化の危険因子と考えることはできないまでも、臨床医は刺青を慎重に観察するべきである。なぜなら、刺青は悪性病変を見誤らせるかもしれない」と述べています。
病気は思わぬところに起きるもののようです。
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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。