2015.11.03 | ニュース

発熱のあと、手足の麻痺が…4歳男児を襲った「急性弛緩性麻痺」とは?

ヨーロッパ初の症例報告
from Euro surveillance : bulletin Européen sur les maladies transmissibles = European communicable disease bulletin
発熱のあと、手足の麻痺が…4歳男児を襲った「急性弛緩性麻痺」とは?の写真
(C) Tomsickova - Fotolia.com

ポリオのように手足が麻痺して動かなくなるなどの症状が、エンテロウイルスD68の感染によって起こることが疑われ、日本小児科学会から会員に調査協力依頼が出されています。ヨーロッパで初めてとされるフランスの患者の例を紹介します。

◆4歳男児、頭痛と嘔吐で発症

2014年に、アメリカでエンテロウイルスD68による肺炎などの下気道感染症が流行しました。そのうち一部の患者で、手足に力が入らず動かせなくなるなどの急性弛緩性麻痺の症状が見られたことが報告されています。ここで紹介する論文は、フランスの研究班がヨーロッパで初めてエンテロウイルスD68の感染にともなう急性弛緩性麻痺を報告したものです。

2014年9月22日に受診したこの4歳の男の子は、生来健康でしたが、頭痛と嘔吐の症状から始まり、発熱をともなう髄膜炎の症状が起こっていました。9月26日には呼吸と血液循環の状態が悪化したためICUでの治療が開始されました。検査で心筋炎肺炎が見られ、抗菌薬などによる治療が行われました。

9月27日に、弛緩性麻痺の症状が現れました。検査の結果、がん自己免疫疾患など、似た症状を起こす病気は否定されました。血漿交換免疫グロブリン静注療法が行われましたが、11月6日の時点で、左腕がある程度動かせるようになったほかには麻痺の症状が残っていました。

 

◆何が原因だったのか?

原因を探るため、血液や尿から細菌を探す検査が行われましたが、病原体と見られるものは見つかりませんでした。のどから取ったサンプルなどからウイルスを探したところ、エンテロウイルスD68が見つかり、アメリカで2014年に流行したウイルスと遺伝的に類似したものと見られました。

 

この報告よりあとにも、ヨーロッパでエンテロウイルスD68による下気道感染症は子どもを中心に多数報告され、急性弛緩性麻痺が見られた例もあります。また、日本でも急性弛緩性麻痺が見られた患者からエンテロウイルスD68が見つかった例が報告されています。

エンテロウイルスD68の感染を予防するワクチンはなく、手洗いなどの一般的な対策が勧められています。より有効な対策のため、今も調査が行われつつあります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Acute flaccid paralysis following enterovirus D68 associated pneumonia, France, 2014.

Euro Surveill. 2014 Nov 6

[PMID: 25394254]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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