2015.10.02 | ニュース

脳梗塞の発症後4.5時間以内のrt-PA治療の効果

ランダム化比較試験により検証

from The New England journal of medicine

脳梗塞の発症後4.5時間以内のrt-PA治療の効果 の写真

脳梗塞には発症後4.5時間以内のrt-PA療法が有効とされ、『脳卒中治療ガイドライン2015』で推奨されています。今回は、「発症後4.5時間以内」の根拠のひとつとなった2008年の論文を紹介します。

◆発症後3〜4.5時間の脳梗塞患者を対象にrt-PA療法の効果を検証

rt-PA(アルテプラーゼ)は、脳の血管に詰まっている血の塊を溶かす治療薬です。

今回の研究は、脳梗塞の発症後3時間から4.5時間の患者を対象として、rt-PAの治療を受ける群と対照群にランダムに振り分け、90日後の障害への影響を検証しました。

治療の結果は、障害がないか少なく好ましい状態と、それに比べると重い障害があり好ましくない状態の2つに分類しました。

 

◆rt-PA療法により90日後の障害は良好

調査の結果、以下のことを報告しました。

プラセボ群と比較して、アルテプラーゼ群では、より多くの患者が好ましいアウトカムを示した(52.4% vs 45.2%、オッズ比1.34、95%信頼区間1.02-1.76、p=0.04)。

全体の解析では、プラセボ群と比較して、アルテプラーゼ群ではより改善していた(オッズ比1.28、95%信頼区間1.00-1.65、p<0.05)。

死亡率は、アルテプラーゼ群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった(7.7% vs 8.4%、p=0.68)。

rt-PA療法を行うと、行わない場合よりも脳梗塞後の障害が改善したという結果でした。死亡率には違いが見られませんでした。 また、薬治療によって起こりうる有害なことのなかでは、症候性頭蓋内出血が多くなる傾向にありました。

 

日本では、rt-PA療法について、今回紹介した論文の投薬量0.9mg/kgとは異なる0.6mg/kgに保険適用が認められています。そのため、この論文の結果が実際には正確に当てはまらない可能性もあります。また、現時点ではアルテプラーゼ以外のt-PA療法は十分な化学的根拠がないため勧められないと、『脳卒中治療ガイドライン2015』に記載されています。

慎重に適応や薬種を検討し、行うべき治療です。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke.

N Engl J Med. 2008 Sep 25

[PMID: 18815396]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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