2015.08.19 | ニュース

臨床試験の報告に矛盾があっても、95%は見逃される

260人の読者が読んだ結果
from International journal of epidemiology
臨床試験の報告に矛盾があっても、95%は見逃されるの写真
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科学研究に誤りはつきもので、論文が公開されたあとに訂正されることは珍しくありません。しかし、その誤りに気付くことも簡単ではありません。多くの誤りが指摘されていた論文を研究者などに読んでもらったところ、誤りの95%は見逃されました。

◆学生、研究者など260人が対象

研究班は、研究機関などで参加者を集め、学生、研究者など260人に、39か所の矛盾があるとされていた論文を読んでもらいました。

 

◆95%の見逃し

結果は、「全体で95.3%の食い違いが見逃された多くの参加者(62%)はひとつも食い違いを見つけることができなかった食い違いのうち10%より多くに気付いた人は11.5%だった」というものでした。

この結果について、研究班は「多くの読者は、たとえ食い違いを探すように特に頼まれたときであっても、その多くを見逃す」とまとめています。

 

この研究では参加者のうち半分の130人が医学生で、より経験を積んだ医師や研究者を中心に調べれば違った結果が出るかもしれませんが、そうだとしても、「10%より多くに気付いた人は11.5%」という結果は論文の誤りを見つけ出すことの難しさを物語る例といえるかもしれません。

なお、問題にされた論文はこちらで全文が公開されています。

"The acute and long-term effects of intracoronary Stem cell Transplantation in 191 patients with chronic heARt failure: the STAR-heart study"

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1093/eurjhf/hfq095/full

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Difficulty in detecting discrepancies in a clinical trial report: 260-reader evaluation.

Int J Epidemiol. 2015 Jun

[PMID: 26174517]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。