2015.08.18 | ニュース

炎症があるところにだけ薬を届けるハイドロゲル、炎症性腸疾患の治療へ

マウスの大腸炎を治療

from Science translational medicine

炎症があるところにだけ薬を届けるハイドロゲル、炎症性腸疾患の治療への写真

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)は、多くの場合、薬剤を使った長期間の治療が必要になります。より効果的に、副作用を抑えながら治療する狙いで、炎症の部分を選んで有効成分の分子を届けるしくみが開発されました。

◆炎症に集まるハイドロゲル

研究班は、炎症が起こっている場所に集まる「炎症標的ハイドロゲル」という物質を開発しました。炎症標的ハイドロゲルは、薬の分子と結び付いて乗り物のように働き、炎症が起こっている場所を選んで薬を届けることができます。

 

◆マウスに治療効果

研究班は、炎症標的ハイドロゲルの効果を調べるため、実験的に腸炎を起こしたマウスを治療しました。

炎症性腸疾患の治療に使われる、ステロイド薬の一種であるデキサメタゾンを炎症標的ハイドロゲルの中に組み込んで浣腸したところ、血液中のデキサメタゾンの濃度を低く抑えたまま、炎症が抑えられる効果が見られました。炎症標的ハイドロゲルを使わないでデキサメタゾンだけを浣腸したときにはこの効果は見られませんでした。

 

この研究ではマウスの実験が行われましたが、人間にも安全に使えて効果が得られるかどうか、今後の研究に期待がかかります。さらに、ほかの病気の治療でも、副作用が問題になりやすい治療薬をより効果的に使えるようにできないかといった想像が広がります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

An inflammation-targeting hydrogel for local drug delivery in inflammatory bowel disease.

Sci Transl Med. 2015 Aug 12

[PMID: 26268315]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る