がん細胞を見分けて抗がん剤を届ける「高分子ミセル」
抗がん剤の多くは全身に流れてがん以外の部分も傷つけてしまうことが副作用の原因になります。副作用を抑えながら高い効果を挙げるために、がん細胞だけが多く持っている物質に反応するなど、がんだけを選んで攻撃する薬がさまざまに工夫されています。東京大学などの研究班が、抗がん剤を「高分子ミセル」という微小な構造に組み込むことで効率的にがん細胞に届ける技術を開発し、マウスのがんを治療する実験に成功しました。
◆高分子ミセルに抗がん剤を載せる
研究班は、オキサリプラチンという
「高分子ミセル」とは、ある種の有機物質の分子が血液のような水溶液の中で集まって作る微小な構造です。オキサリプラチンをDACHPt/mの形にすることによって、オキサリプラチンが
◆マウスの悪性黒色腫を小さくした
研究班は、マウスに悪性黒色腫という皮膚がんの一種の細胞を移植し、がんが成長してから、普通のオキサリプラチンと、DACHPt/mを使って治療しました。
普通のオキサリプラチンを使ったマウスでは、がんに変化が見られませんでしたが、DACHPt/mを使ったマウスでは、がんが小さくなる効果が見られました。
副作用の目安になる体重減少は、DACHPt/mを使ったマウスには見られませんでした。
DACHPt/mが実際の治療に使えるようになるまでには多くの課題をクリアしなければなりませんが、さまざまな新技術が試されつつあるがん治療に、またひとつの候補が加わったと言えるかもしれません。
なお、この研究のメンバーが関わった別の研究では、高分子ミセルを使ってがんに届けた物質を使い、がんに狙いを絞って体内から放射線を照射する技術が開発されています。興味のある方はこちらもあわせてご覧ください。
「東大発、がんに集まる物質を
執筆者
Systemic Targeting of Lymph Node Metastasis through the Blood Vascular System by Using Size-Controlled Nanocarriers.
ACS Nano. 2015 May 26
[PMID: 25880444]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。