食道がんの手術前に化学放射線療法を使うと結果はよくなるのか?長期間の検討
過去に報告された研究で、食道がんの手術の前に化学放射線療法を行った結果、5年生存率の改善が見られていました。その対象者をさらに長期間追跡し、最長およそ10年にわたる経過を調べた結果が報告されました。
◆食道がん患者をランダム化
研究班は、食道がんの患者をランダムにグループに分け、決まった内容の
手術の前に行う化学療法や放射線療法は、
◆化学放射線療法で生存期間が長くなった
次の結果が得られました。
[...]全生存期間の中央値は術前化学放射線療法群で48.6か月(95%信頼区間32.1-65.1)、手術単独群で24.0か月(14.2-33.7)だった(ハザード比0.68、95%信頼区間0.53-0.88、log-rank検定でP=0.003)。扁平上皮がんの患者で、全生存期間の中央値は術前化学放射線療法群で81.6か月(95%信頼区間47.2-116.0)、手術単独群で21.1か月(15.4-26.7)だった(ハザード比0.48、95%信頼区間0.28-0.83、log-rank検定でP=0.008)。腺がんの患者では、術前化学放射線療法群で43.2か月(24.9-61.4)、手術単独群で27.1か月(13.0-41.2)だった(ハザード比0.73、95%信頼区間0.55-0.98、log-rank検定でP=0.038)。
長期間の経過を比べても、手術の前に化学放射線療法を行ったグループのほうが、生存期間が長くなっていました。
また、がんの種類ごとに分けた解析も行われました。食道がんには扁平上皮がんと腺がんという種類があり、扁平上皮がんのほうが放射線療法が効きやすいと言われています。解析の結果、扁平上皮がんの患者でも、腺がんの患者でも、化学放射線療法を行ったグループのほうが生存期間が長くなっていました。
研究班はこの結果から、「[...]術前化学放射線療法とそれに続く外科切除は、局所進展した切除可能な食道がんまたは食道胃接合部がんの患者に対する治療の標準とみなされるべきである」と結論しています。
治療の違いによる結果が見られたことで、よりよい治療を提供する助けになるかもしれません。
執筆者
Neoadjuvant chemoradiotherapy plus surgery versus surgery alone for oesophageal or junctional cancer (CROSS): long-term results of a randomised controlled trial.
Lancet Oncol. 2015 Aug 5 [Epub ahead of print]
[PMID: 26254683]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。