◆診断後10年以上の生存との関連を解析
研究班は、膵臓がんの多くを占める膵管腺がんというタイプのがんについて、1998年から2002年に手術を受けたアメリカの患者1万人あまりの情報を統計解析し、診断から10年以上生存したかどうかと、病気についての情報の関連を調べました。
◆リンパ節転移、化学療法、T分類
解析から次の結果が得られました。
生存について完全な情報が得られた11,081人の患者のうち、431人(3.9%)が長期生存者だった。長期生存を有意に予言できた(有意性をオッズ比と95%信頼区間によって決定された)要因は、重要さの順に、リンパ節の陽性比(0%の場合オッズ日4.6、3.4-6.4)、術後化学療法(オッズ比2.4、2.0-3.0)、病理T分類(T1の場合オッズ比3.1、1.8-5.6)[...]だった。
いくつかの要因に10年以上の生存と関連が見られ、特に膵臓の周りのリンパ節にがん細胞が見つからなかった(リンパ節転移がなかった)とき、手術のあとに化学療法が行われたとき、がんの大きさが2cm以内で膵臓の外に出ていなかったときに、大きい関連がありました。
研究班は、「我々の調整した解析はリンパ節比、術後化学療法の使用、病理T分類が膵管がんの長期生存に関連する上位3種の変数であることを同定した」と述べています。
もともと病気が軽かったときに長生きできる場合が多いと解釈すれば、一部は当然の結果のように感じられるかもしれませんが、化学療法が行われたときのほうが10年以上の生存が多かったということは、治療において何かの判断材料になるかもしれません。
ただし、この関連は必ずしも化学療法に長期生存を増やす効果があると示すものではなく、もともとの状態がよいなど、化学療法を積極的にするべきと判断された根拠の中に、長期生存につながる要因があった可能性も否定できません。化学療法の効果については、その点に的を絞った研究によって、最適な使い方が見つけ出されることが望まれます。
執筆者
Characteristics of 10-Year Survivors of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma.
JAMA Surg. 2015 Jun 10 [Epub ahead of print]
[PMID: 26062046]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。