2015.08.01 | ニュース

インフルエンザウイルスがボツリヌス毒素のワクチンに

マウスで中毒を予防
from Frontiers in immunology
インフルエンザウイルスがボツリヌス毒素のワクチンにの写真
(C) nobeastsofierce - Fotolia.com

食中毒を起こすボツリヌス菌の毒素は非常に強力です。アメリカの研究班は、ボツリヌス毒素のワクチンとして、遺伝子を組み換えたインフルエンザウイルスを作成しました。マウスに接種したところ、致死量の毒素を与えても生存する結果が得られました。

◆インフルエンザウイルスを改造する

研究班は、インフルエンザウイルスの遺伝子組み換えによって、ボツリヌス毒素タンパク質を構成する一部分をウイルスが作るようにしました。このウイルスを培養してワクチンとし、マウスに接種する実験を行いました。

 

◆ボツリヌス毒素にも、インフルエンザにも耐える効果

研究班は、マウスにワクチンを接種したのち、致死量のボツリヌス毒素を与える実験と、致死量のインフルエンザウイルスを与える実験を行いました。その結果、ワクチンを接種したマウスは、ボツリヌス毒素を与えたときも、インフルエンザウイルスを与えたときも、すべて生存しました

研究班は「この結果は、ボツリヌス症とインフルエンザの両方に対する二重の目的を持った経鼻ワクチンを開発することの実現可能性を示した」と述べています。

 

ボツリヌス菌は日本でもしばしば食中毒による死者を出しますが、ワクチンとして広く使われているものはありません。マウスの結果が人間にも当てはまるとは限りませんが、もし実際に予防効果があれば、衛生管理の限界を補えるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Intranasal vaccination with an engineered influenza virus expressing the receptor binding subdomain of botulinum neurotoxin provides protective immunity against botulism and influenza.

Front Immunol. 2015 Apr 21

 

[PMID: 25954272]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。