2015.07.29 | ニュース

骨髄の細胞を移植して糖尿病を改善?間葉系前駆細胞の効果とは

アメリカで2型糖尿病患者61人の試験

from Diabetes care

骨髄の細胞を移植して糖尿病を改善?間葉系前駆細胞の効果とはの写真

骨髄にある間葉系前駆細胞は、動物への移植実験で、インスリンを作るようになる結果が得られています。著者らは実際の2型糖尿病患者に移植して安全性試験を行った結果、急激な反応はなく糖尿病をやや改善する傾向が見られました。

◆MPCの細胞数を変えて、2型糖尿病患者へ静脈内注入

 

著者らは以下の試験を行いました。

間葉系前駆細胞(MPC) (Mesoblast社製、rexlemestrocel-L)を0.3 x 106細胞/kg(15人)、1.0 x 106細胞/kg(15人)または2.0 x 106細胞/kg(15人)あるいは偽薬(16人)を静脈内注入した効果について、用量漸増ランダム化偽薬対照試験を行った。

つまり間葉系前駆細胞(MPC)を、細胞の数を変えて2型糖尿病患者に静脈内注入で移植しました。

 

◆急激な副作用は見られず、HbA1c低下

著者らは以下の試験を行いました。

被験者(男性21人、女性40人)として、HbA1cのベースラインは8.3 ± 1.0% (67 ± 10.9 mmol/mol)、BMIは 33.5 ± 5.5 kg/m2、糖尿病の罹病期間は10.1 ± 6.0年の人々を、アメリカ18カ所で登録した。注入による急性有害事象(AE)は生じなかった。12週間の間、重篤なAE、重篤な低血糖のAEまたはAEによる被験中止は起こらなかった。ドナー特異的な抗HLA抗体の産生や感作は生じなかった。安全性の詳細は、処置した集団間で同程度であった。偽薬と比較して、rexlemestrocel-Lの単独静脈注入は治療第1週よりも後のすべての時点においてHbA1cを減らした。

つまり糖尿病を発症している患者を対象に間葉系前駆細胞を静脈から注入しても、急激な反応は起きませんでした。また糖尿病の検査であるHbA1cの量が注入によって低下しました。
著者らは結論として、「この短期間の試験調査は、2型糖尿病患者に最大2億4600万個のMPCを注入することの安全性と実行可能性を示している」と述べています。

MPCを移植することで、糖尿病を改善する効果が示唆されるとともに、深刻な問題が無かったという結果が得られました。このような安全性の調査は非常に大事で、今後より大きな試験で効果と安全性が確立されれば、糖尿病の新たな治療法になるかも知れません。

執筆者

高田

参考文献

Allogeneic Mesenchymal Precursor Cells in Type 2 Diabetes: A Randomized, Placebo-Controlled, Dose Escalation Safety and Tolerability Pilot Study.

Diabetes Care. 2015 Jul 7.

 

[PMID: 26153271] http://care.diabetesjournals.org/content/early/2015/07/01/dc14-2830.abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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