2015.07.15 | ニュース

炭素でリンパ節に色をつけて、甲状腺がんの手術を安全に

中国162人の治療例
from Head & neck
炭素でリンパ節に色をつけて、甲状腺がんの手術を安全にの写真
(C) Von Schonertagen - Fotolia.com

甲状腺がんの治療として、甲状腺とともに、がん細胞が転移しやすい周りのリンパ節をあわせて取り除く手術があります。甲状腺の近くには副甲状腺という米粒大の臓器が4個あり、誤って切り取ってしまうと血液中のカルシウムの量に異常が起こりますが、見分けにくく注意が必要です。中国の研究班が、炭素でリンパ節に色をつけることで見分けやすくする方法により、副甲状腺を誤って切り取ることが減ったことを報告しました。

◆炭素ナノ粒子でガイド

この研究では、「炭素ナノ粒子」を甲状腺に注射する方法が使われました。炭素ナノ粒子は体に害のない微小な粒子で、甲状腺に注射すると、リンパ液の流れに乗って周りのリンパ節に流れ込みます。炭素ナノ粒子が流れ込んだリンパ節は黒く染まって見えますが、副甲状腺には甲状腺からリンパ液が流れていかないため染まらず、見分けやすくなります。

 

◆炭素ナノ粒子ありとなしでそれぞれ81人

研究班は、甲状腺乳頭がんがある81人の患者に甲状腺切除術を行い、その際炭素ナノ粒子を注射してリンパ節切除を行いました。また、対照として別の81人の甲状腺乳頭がんの患者には、炭素ナノ粒子を使わずに甲状腺切除術とリンパ節切除を行いました。

 

◆副甲状腺切除が減った

手術のあとの経過について以下の結果が得られました。

対照群に比べて、炭素ナノ粒子群ではリンパ節切除率、転移を有するリンパ節切除率が有意に高かった。炭素ナノ粒子群では、誤って切除された副甲状腺の数は4件(対照群14件)、術後の低カルシウム血症は6件(対照群17件)、術後の副甲状腺機能低下症は8件(対照群20件)、低カルシウム血症からの回復期間は2.33±0.58週(対照群3.8±0.92週)であり、いずれも対照群に比べて有意に少なかった(P<0.05)。

誤って副甲状腺が切除されることが、炭素ナノ粒子を使った人では4件、使わなかった人では14件と、炭素ナノ粒子を使ったほうが少なくなっていました

研究班は、「炭素ナノ粒子は甲状腺乳頭がんの患者に対する甲状腺切除術の際、リンパ節切除をより正確にガイドするために応用できるかもしれない」と結論しています。

 

副甲状腺を安全に守ることは重要です。この結果は患者の選び方や手術を行う医師によって変わる可能性もありますが、炭素ナノ粒子が手術をより安全にする可能性があるのかもしれません。毒性やアレルギー反応がないかといった点もよりはっきりと検証されていけば、いつか広く使われるようになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Carbon nanoparticle-guided central lymph node dissection in clinically node-negative patients with papillary thyroid carcinoma.

Head Neck. 2015 Mar 31 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 25832013]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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