2015.07.06 | ニュース

ポリオは2014年に600回以上、国境を越えて感染した?ウイルス感染例からの推計

感染地域についての数理モデル

from BMC medicine

ポリオは2014年に600回以上、国境を越えて感染した?ウイルス感染例からの推計の写真

小児麻痺(ポリオ)はポリオウイルスの感染によって足の麻痺などが起こる病気で、治療法はなく、ワクチンで予防されます。日本では根絶されたとされていますが、ほかの地域ではまだ流行があり、感染した人が移動することによりほかの地域に感染が広がることもありえます。国際チームによる研究から、2014年には国境を越えて感染が広がることが600件以上あったとする推定が示されました。

◆数理モデルから推定

研究班は、ポリオウイルスの感染が報告されている国での発症例や人口、ワクチンの接種率、旅行者の出入りなどをもとに数理モデルを作成し、2014年にポリオウイルス感染がある国からほかの国に感染が広がった数などを見積もりました。

 

◆パキスタンからの感染が多い

次のことが推定されました。

このモデルから、2014年には、小児麻痺の感染がある9か国から665件の小児麻痺の輸出(そのうち99%以上は非症候性)があったと推定され、そのうち78.3%がパキスタン由来と見られた。このモデルはまた、同年にハッジによってサウジアラビアに21件のポリオウイルスの輸入があり、インドには20件のポリオウイルス感染の輸入があったと推定した。

2014年の1年間で、9か国から計665件にわたってポリオウイルスの感染が広がり、うち8割近くがパキスタンから広がったものと見られました。また、イスラム教の巡礼者であるハッジによってサウジアラビアにポリオウイルスの感染が広がったことが21件あったこと、最近ポリオ根絶を達成したとされるインドにはほかの地域から20件にわたってウイルスが入り込んでいたことが推定されました。

 

ポリオウイルスは成人に感染することもあり、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアはいまだポリオ常在国とされています。WHOは世界からポリオを根絶することを目指しており、こうした推計が各地域での対策に向けた提言につながっていくかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Potential for international spread of wild poliovirus via travelers.

BMC Med. 2015 Jun 4

 

[PMID: 26044336]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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