2015.06.18 | ニュース

頭への磁気刺激でALSを見つけられるかもしれない

オーストラリアの研究チームが鑑別診断の有用性を検証

from The Lancet. Neurology

頭への磁気刺激でALSを見つけられるかもしれない の写真

2014年にアイスバケツチャレンジで話題になった筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、診断が遅れてしまうことが1つの問題となっています。今回の研究では、ALSの可能性のある対象者に、経頭蓋磁気刺激法(TMS)という手法を診断ツールとして使えるか試したところ、実際にALSがある人の73%を正しく見つけられたという結果が出ました。

◆経頭蓋磁気刺激法(TMS)とは

脳に対して頭蓋骨上から磁気刺激を行い、その反応から脳内や脳とつながる神経に異常がないかを調べる手法のことです。コイルに強力な磁場を発生させることで、電流が頭蓋内に届くという原理を用いています。

 

◆ALSの診断にTMSを適用

今回の研究では、3施設の神経筋センターに通院している神経筋疾患の疑いがある人を対象に、以下の方法でTMSの性能を調べました。

TMSにより異常な反応があるかどうかを調べ、ALSの診断(淡路基準:ALSの診断基準で、「上下肢の運動神経障害の臨床症状の有無、6ヶ月進行している」などの基準がある)と照らし合わせて、TMSの結果が診断とどの程度一致するかを計算しました。

 

◆TMSで感度73.2%、 特異度80.9%

調査の結果、TMSはALSの診断ツールとして、以下の結果を示しました。

209名をALSと診断、68名をALSではないと診断した。

早期の段階において、TMSによって、ALSとそうではない者を分別する感度は73.21%(95%信頼区間66.66-79.08)、特異度80.88%(95%信頼区間69.53-89.40)であった。

ALSと診断された人のなかで、TMSで脳内の異常があるとされた人は約73%ALSと診断されなかった人のなかで、脳活動が異常ではなかった人は約81%という結果でした。

筆者らは、「TMSにより、ALSとそうではない者を鑑別できる可能性が示された。これらの知見が大規模調査で明らかになれば、ALSの早期ステージにおける診断として、淡路基準と併せて有用であるかもしれない」と述べています。

 

ALSが早期からより正確に診断されれば、その後の治療に影響を与える可能性が考えられます。今回の結果をふまえ、さらに対象者数を増やした検証で高い精度が出れば、将来TMSが診断に用いられる日が来るかもしれません。

執筆者

MT

参考文献

Sensitivity and specificity of threshold tracking transcranial magnetic stimulation for diagnosis of amyotrophic lateral sclerosis: a prospective study.

Lancet Neurol. 2015 May

[PMID: 25843898]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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