◆約9万人を対象にした調査
著者らは以下の方法で調査を行いました。
2つの大きな一般集団コホートから93,179人に関し、メンデル無作為化試験を行った。
[...]CYP1A1、CYP1A2とAHRの遺伝子座近傍にある5種の遺伝変異に関しコーヒー飲量との関連を調べた。更に遺伝変異と肥満、メタボリックシンドローム及び2型糖尿病、またそれらに関連する構成要素との関連を調べた。
まず93,179人に対しコーヒー飲量と肥満・2型糖尿病などのリスクの相関関係を調べました。
次に、ある遺伝変異と、コーヒー飲量および肥満・2型糖尿病の相関関係を調べました。この遺伝変異は、この研究よりも前に見つかっていたもので、この遺伝変異を持っている人はコーヒーを飲む量が多くなると言われています。
※詳しくはこのシリーズ前回の記事をご覧ください。
「コーヒーと遺伝子(1)コーヒーをよく飲むDNAとは?」
http://medley.life/news/item/55827c09095b9f2b01684907
今回の論文の著者らは、最終的にはこの遺伝変異が肥満や2型糖尿病と関連があるか、相関関係を求めました。もしコーヒーを飲むことによって肥満・2型糖尿病を防ぐ効果があるなら、この遺伝変異がある人では肥満・2型糖尿病が少なくなっていることが予想されます。
◆コーヒーを飲むと肥満やメタボを抑えるが、対象とした遺伝変異に関連はなかった
著者らは以下の結果を得ました。
観察結果として、コーヒーの高飲量は肥満、メタボリックシンドローム及び2型糖尿病リスクの低下と関連していた。
遺伝解析では、コーヒーを飲むのに関連するアレル数9から10と、0から3との比較では、9から10の方において29%コーヒー飲量が高かった。しかしながらこの遺伝変異は、肥満、メタボリックシンドローム及び2型糖尿病、BMI、 腹囲,体重、身長、収縮期/拡張期血圧、トリグリセライド、コレステロール総量、及び低密度リポタンパク質コレステロールやグルコース量と説得力ある関連は無かった。
コーヒーを多く飲む人では肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病が少なくなっていました。また、特定の遺伝変異がある人では、コーヒーを飲む量が多くなっていました。ところが、その遺伝変異と肥満などとの間には関連が見られませんでした。
著者らは、「コーヒーの高飲量は肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病と関連因子のリスク低下をもたらした。しかしながら遺伝的な解析からは対応する因果関係は支持しなかった」と結論づけました。
コーヒーを多く飲む人では確かに肥満や2型糖尿病を発症する割合が少なく、何かの関係がありそうです。その為もしコーヒーを飲むことが肥満などを減らす直接の原因ならば、コーヒーを多く飲む遺伝変異を持つ人でも、肥満が少ないはずです。ですが調査結果はそうなりませんでした。コーヒーを飲む量と肥満・2型糖尿病に関しての関連は、他の何らかの別要因が関係するようです。
つまり、ほかの生活習慣によって肥満を防いでいた人にはコーヒーを多く飲む傾向がある、といった可能性も考えられます。コーヒーと肥満の関係が考えられた元々の根拠がマウス実験や細胞実験等の結果にもよるので、現実との差があるのかも知れません。
執筆者
Coffee intake and risk of obesity, metabolic syndrome and type 2 diabetes: a Mendelian randomization study.
Int J Epidemiol. 2015 May 22
[PMID: 26002927] http://ije.oxfordjournals.org/content/early/2015/05/22/ije.dyv083.abstract
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。