◆2012年から2013年の高リスク集団に対する実績を調査
研究班は、次のように非侵襲出生前スクリーニングの結果の情報を調べました。
非侵襲出生前スクリーニングを受け、2012年3月から2013年12月にある三次医療教育施設を受診した患者の診療情報を後ろ向きに精査した。非侵襲出生前スクリーニングの結果は診断的遺伝子検査の結果、胎児超音波検査の結果、臨床的表現型または転帰と比較された。
研究に参加した施設を受診した人で、高齢出産や以前に産んだ子に染色体異常が見つかっていたなどの背景から非侵襲出生前スクリーニングを受けた人の診療情報を集め、非侵襲出生前スクリーニングの結果と、そのほかの検査や子どもが産まれた後の様子などから判断される、実際に異常があったかどうかを対応させました。
◆陽性正診率77.4%、陰性正診率27%
調査から次の結果が得られました。
非侵襲出生前スクリーニングを受けた632人の患者に対して、検査を提供している4か所の大手商業検査施設のうち1か所で検査の92%が行われていた。しかし、4施設のすべてから、正常と異常の両方の検査結果が出ていた。非侵襲出生前スクリーニングから55件の異常の結果があった。そのうち41件は胎児の異常な転帰と一致し、12件は一致せず、2件は判定不能だった。スクリーニングにあるすべての項目に対しての陽性正診率は77.4%(95%信頼区間63.4-87.3)だった。非侵襲出生前スクリーニングから正常の結果があった578人の患者で、正常な妊娠転帰は156人(27%)だった。
非侵襲出生前スクリーニングを受けた人は632人でした。ほとんどの人が高齢出産など、子どもの染色体異常のリスクが高いと考えられる状態にありました。
検査を受けた632人の結果のうち、異常の結果が55件あり、そのうち実際に異常があったのは77.4%にあたる41件でした。正常の結果は578人に出て、そのうち実際に異常がなかったのは27%にあたる156人でした。
研究班はこの結果から、非侵襲出生前スクリーニングで異常の結果が出ても「診断的と考えることはできない」と述べています。
非侵襲出生前スクリーニングはできたばかりの技術で、良い面、悪い面が明らかになってくるのはまだまだこれからです。77.4%という数字は、異常の結果が出ても20%以上は異常のない児が生まれたということであり、また正常の結果が出たあとで実際には異常があるとわかった人が400人あまりいたことも報告されています。倫理的側面についても議論があります。この報告を含め、さらに多くの検証と評価がこれから積み重なっていくことになりそうです。
執筆者
Positive predictive value of non-invasive prenatal screening for fetal chromosome disorders using cell-free DNAin maternal serum: independent clinical experience of a tertiary referral center.
BMC Med. 2015 Jun 2 [Epub ahead of print]
[PMID: 26033224]
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