うつ病に抗うつ薬と頭への電気刺激を組み合わせると効果あり
うつ病の治療として、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)という、頭皮上に電極を貼り、かなり微弱な電気を流すことで脳に刺激を与える手法が最近試されています。今回の研究では、うつ病に対してtDCSと選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)というタイプの抗うつ薬の併用効果が検証され、それぞれを単独で使用するよりも効果があったと報告されました。
◆6週間の治療効果を検証
今回の調査では、うつ病患者120名が対象となりました。
120名の患者は、tDCS施行の有無とセルトラリン投薬の有無の組み合わせ計4群にランダムに振り分けられました。つまり、tDCSとセルトラリンの併用治療群、tDCSのみ群、セルトラリンのみ群、どちらも行わない群(偽薬/偽刺激群)の4群に分かれ、併用治療群では次の方法でtDCSとセルトラリンによる治療が行われました。
陽極を左の前前頭骨上に、陰極を右の前前頭骨上に貼り付け、2mAのtDCS(30分のセッションを12回:月曜日から金曜日に1日1回10セッションと隔週で2セッション)とセルトラリン塩酸塩(50mg/d)を6週間施行した。
[...]主な効果指標は、6週間時点でのMontgomery-Asbergうつ病評価尺度のスコアとした。
6週間の実施後にうつ状態がどのように改善しているか検証しました。
◆tDCSとセルトラリンを併用するのが一番効く
調査の結果、うつ状態の評価について、以下のことが報告されました。
[...]併用治療群(セルトラリン/tDCS)は、セルトラリンのみ群(平均の差8.5ポイント、95%信頼区間2.96-14.03、p=0.002)、tDCSのみ群(平均の差5.9ポイント、95%信頼区間0.36-11.43、p=0.03)、偽薬/偽刺激群(平均の差11.5ポイント、95%信頼区間6.03-17.10、p<0.001)よりも
有意 に効果が認められた。tDCSのみ群とセルトラリンのみ群は同様の効果が認められた(平均の差2.6ポイント、95%信頼区間-2.90-8.13、p=0.35)。
tDCSとセルトラリンを併用した群で最もうつ状態の改善が大きかった、という結果でした。また、tDCSだけで治療した群の効果は、セルトラリンのみで治療した群の効果と統計的な違いが見られませんでした。
tDCSは近年、精神疾患分野において電気刺激療法として知られるようになってきました。一見すると「頭に電気刺激!?」と思ってしまうかもしれませんが、その刺激は皮膚で感じるか感じないか程度のもので、安全性もこの研究以前にも検証されたものです。近いうちに、日本でも見ることがあるかもしれませんね。
執筆者
The sertraline vs. electrical current therapy for treating depression clinical study: results from a factorial, randomized, controlled trial.
JAMA Psychiatry. 2013 Apr
[PMID: 23389323]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。