関節リウマチの新薬、臨床試験開始
関節リウマチは非常に多くの人に起こる病気で、治療としてすでにさまざまな薬剤が使われていますが、より有効で副作用の少ないものを目指す研究が行われています。その中で新しく作られた「MOR103」という薬について、実際の患者に対して大きな危険なく使えるかどうかを確かめる試験が行われ、その結果、有効性を確かめる試験に進むべきだという報告が出されました。
◆関節リウマチ患者96人に投与
研究班は、中等度の関節リウマチの患者96人を対象に、用量を0.3mg/kg(体重1kgあたり薬剤0.3mg)、1.0mg/kg、1.5mg/kgの3段階に変えてMOR103を静脈から投与し、有害な結果が起こらないかを調べました。対象者はどの用量を与えられるか、または偽薬を与えられるかをランダムに割り当てられました。患者も治療に当たった医師も、自分がどの用量を割り当てられているかを知りませんでした。
◆薬剤の有無によって有害性に差はなかった
MOR103による有害な効果について、以下の結果が得られました。
MOR103治療群で治療によって起こされた有害事象は軽度または中等度で、一般に偽薬群と
有意 差のない頻度で報告された。2例の有害事象は、入院につながったため、深刻と評価された:偽薬群の爪周囲炎、MOR103 0.3mg/kg群の胸膜炎。どちらの患者も完全に回復した。
MOR103を使った場合に有害な結果が起こる頻度は、偽薬を使った場合と統計的に違いがありませんでした。MOR103を使った参加者の1人が胸膜炎で入院しましたが、完全に回復しました。
この試験では、有効性を確かめる試験に備えて、用量ごとに治療効果が評価されました。
探索的有効性解析では、偽薬を投与された対象者に比べてMOR103 1.0gm/kg群と1.5mg/kg群でDAS-28スコアと関節数の改善があり、EULAR反応率が高かった。MOR103 1.0mg/kgが疾患活動性のパラメータを最も大幅に低下させた。
MOR103を1.0mg/kg使った群と1.5mg/kg使った群で、症状などの改善が見られました。
この結果は、有効性を確かめた根拠とするには参加者の人数が少なく不十分ですが、より多くの参加者を対象として有効性を確かめる試験を行うときには、用量を決めるための情報になります。
研究班は、「このデータは、関節リウマチの患者においてこのモノクローナル抗GM-CSF
MOR103は、体内の「GM-CSF」という物質に対する抗体です。GM-CSFは関節リウマチを含めて免疫のしくみに関わっていると考えられ、MOR103を投与することで、GM-CSFが関わる体の働きや病気に何らかの影響を与えられる可能性が考えられます。
新薬として治療の場に登場するまでの長い道のりの中で、MOR103がひとつのステップを昇ったといえる研究です。
執筆者
MOR103, a human monoclonal antibody to granulocyte-macrophage colony-stimulating factor, in the treatment of patients with moderate rheumatoid arthritis: results of a phase Ib/IIa randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-escalation trial.
Ann Rheum Dis. 2015 Jun
[PMID: 24534756]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。