2015.04.27 | ニュース

脊髄手術がALSの発症と進行に関わっている!?

ポルトガルの研究チームがALS患者657例を調査

from Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry

脊髄手術がALSの発症と進行に関わっている!?の写真

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は筋肉を動かす指令を伝える神経が障害される病気です。 原因不明の難病ですが、戦時中の兵士やセリエAのサッカー選手に多いことから、外傷と関係があるのではないかと言われており、手術も同様にALSの発症に関わるのではと議論されていました。 今回、ポルトガルの研究チームは脊髄周辺の手術がALSの発症や進行に影響を及ぼす可能性があることを報告しました。

◆ALS患者657例の調査を行う

患者データベースから検索したALS患者657例を、手術の既往歴(手術の有無や手術した時期)から以下のグループに分けました。

分類
・グループ1(464名):手術歴なし
・グループ2(111名):ALS発症の3か月以上前に手術を行った
・グループ3(23名):ALS発症前の3か月以内に手術を行った
・グループ4(59名):ALS発症後に手術を行った

​発症後3か月ごとに行われた機能評価をもとに、発症した部位と手術した部位の関連性を分析しました。

 

◆脊髄周囲の手術とALSの症状は関係している

ALSの発症前3か月以内に手術を行ったグループにおいて、ALSの発症部位と手術部位に相関が認められました。
このグループの全23名のうち、脊髄領域に発症した患者15名は全例が脊髄手術を受けており、喉を中心に障害される球麻痺患者8名のうち5名も同様に脊髄手術を受けていました。

また、ALSを発症してから手術を行ったグループ59名のうち、35名(57.6%)が初診時の誤診に起因すると思われる手術が行われていたことが分かりました。

研究チームは、「手術はALSの進行に影響を及ぼしている可能性があるため、不必要な手術を防ぐためにも、慎重にそして正確にALSの診断をすることが重要」と主張しています。

 

今回のこの研究は症例数の少なさなど不十分な点はありますが、さまざまなことが考えられる内容だと思います。ぜひともALSを診察されたことがある医師の方々に、手術とALSの発症や進行に関してコメント頂けると嬉しいです。

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Does surgery accelerate progression of amyotrophic lateral sclerosis?

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014 Jun

[PMID: 23922387]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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