ルキソリチニブ(JAK阻害薬)
体内で血液系細胞の分化・増殖、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインのシグナル伝達などに深く関わるJAL(ヤヌスキナーゼ)を阻害することで骨髄線維症や真性多血症などの骨髄増殖性腫瘍による症状を改善する薬
同義語:
ヤヌスキナーゼ阻害薬

ルキソリチニブ(JAK阻害薬)の解説

ルキソリチニブ(JAK阻害薬)の効果と作用機序

  • JAKという血液系細胞の分化や増殖などに関わる酵素を阻害することで、骨髄線維症や真性多血症などの症状を改善する薬
    • 骨髄線維症や真性多血症などの骨髄増殖性腫瘍造血幹細胞の異常により、骨髄系の細胞の異常な増殖などを引き起こす
    • 骨髄増殖性腫瘍の病因にはJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素の異常な活性化などが深く関わっているとされる
    • 本剤はJAK(JAK1及びJAK2)を阻害する作用をあらわす

ルキソリチニブ(JAK阻害薬)の薬理作用

骨髄線維症や真性多血症などの骨髄増殖性腫瘍(MPN)は造血幹細胞の異常により、一系統以上の骨髄系細胞が異常な増殖を引き起こす病気。MPNの原因は十分には解明されていないが、JAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素が関わるシグナル伝達経路(JAK-STAT経路)の活性化などが大きな役割を果たしているとされる。

骨髄線維症の患者では、TNF-α(腫瘍壊死因子α)やIL-6(インターロイキン6)などの炎症性サイトカインの上昇がみられ、これらのサイトカインのシグナル伝達にはJAK1の関与が考えられている。また真性多血症の患者の多くにJAK2の遺伝子変異(JAK2V617F遺伝子変異)があり、この遺伝子変異が陰性の場合であってもJAKが関わる経路の過剰な活性化をもたらす遺伝子異常(JAK2exon12変異)が確認されていることなどから、病因にJAK2の異常な活性化が深く関わっていると考えられている。

本剤(ルキソリチニブ)はJAK1及びJAK2を選択的に阻害することで、JAK-STAT経路のシグナル伝達を抑える作用をあらわす。JAK1及びJAK2の双方を阻害することによって、骨髄線維症においては主な症状のひとつである脾腫(脾臓が腫れて大きくなっている状態)を縮小させ随伴する全身症状を改善する効果が期待でき、真性多血症においては赤血球数や白血球数をコントロールすることで脾腫を縮小させたり症状を改善する効果が期待できるとされている。

なお、JAK阻害薬には炎症性サイトカインの働きを抑える効果が期待できるため、例えば、トファシチニブやバリシチニブといったJAK阻害薬は炎症性サイトカインが深く関わる関節リウマチなどの治療薬として臨床で使われている。

ルキソリチニブ(JAK阻害薬)の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 下痢、吐き気、腹痛などがあらわれる場合がある
  • 代謝及び栄養障害
    • 体重増加、食欲減退、高コレステロール血症などがあらわれる場合がある
  • 精神神経系症状
    • 不眠、頭痛、めまいなどがあらわれる場合がある
  • 骨髄抑制
    • 血小板減少症、貧血好中球減少症などがあらわれる場合があり、細菌ウイルスなどによる感染症を引き起こす可能性もある
    • 手足に点状出血、あおあざができやすい、出血しやすい、突然の高熱、寒気、喉の痛みなどがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 肝機能障害
    • ASTやALTの増加などを伴う肝機能異常があらわれる場合がある
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気、痒みなどがみられ症状が続く場合には放置せず、医師や薬剤師に連絡する

ルキソリチニブ(JAK阻害薬)の一般的な商品とその特徴

ジャカビ

  • 通常、1日2回、12時間毎を目安に服用する