こつずいせんいしょう
骨髄線維症
血液を作る骨髄が固く変化(線維化)していき、血液をうまく作れなくなる病気。原因不明の場合(一次性)と原因がはっきりとしている場合(二次性)がある
6人の医師がチェック 59回の改訂 最終更新: 2020.07.20

骨髄線維症の基礎知識

POINT 骨髄線維症とは

骨髄は、骨の中にあるゼリー状の軟らかい組織で、血液成分の源となる細胞である造血幹細胞を含んでいます。(原発性)骨髄線維症では骨髄内でコラーゲンが大量に作られてしまうことにより骨髄が固く変化し、血液を正常に作ることができなくなります。症状としては体重減少、発熱、だるさ、ふらつき、動悸、疲れやすさ、お腹の張りなどが見られます。診断は血液検査、骨髄検査、画像検査、遺伝子検査などを用いて行います。治療は、軽症の場合には様子を見るだけの場合もありますが、輸血や薬物療法がしばしば行われます。放射線治療、脾臓摘出手術、同種造血幹細胞移植などが行われる場合もあります。骨髄線維症が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。

骨髄線維症について

  • 骨髄は、血液細胞を作る造血幹細胞と、骨髄を支える梁の役割を果たす線維などで構成されている
    • この線維が異常に増えて造血幹細胞の居場所がなくなり、血液細胞が作れなくなる病気
  • 線維を増やす信号を過剰につくる異常な造血幹細胞が増えるのが原因
    • 造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり発症すると考えられている
      • 約50%の患者でJAK2変異、約20-30%の患者でCALR変異、約5%の患者でMPL変異という遺伝子変異が検出される
    • 患者の遺伝子に異常があるわけではない(子孫に影響はしにくい)
  • 骨髄で血液が作れない分、体の他の部位で血液が作られる(髄外造血)
    • お腹にある臓器である肝臓や脾臓が大きく腫れる
  • 罹患率は人口10万人あたり0.3人くらいと考えられている
    • 年間新規患者発生数は380人程度と推定される
    • 比較的高齢者に多く、2:1の割合で男性に多い
    • 40歳未満で罹患する人はほとんどいない

骨髄線維症の症状

  • 患者のおよそ20%は症状の自覚がない
  • 残りの80%は以下のいずれかの症状がある貧血赤血球不足)による症状
    • ふらつき
    • めまい
    • 疲れやすい
    • だるい
    • 動悸
    • 息切れ
  • 肝臓や脾臓の腫れによる症状
    • 腹部の膨満感や不快感
    • 腹痛
  • 血小板(止血機能を持つ血液細胞)不足による症状
    • 血が止まりにくい
    • 歯茎からの出血や鼻血
    • 皮膚に青あざができやすい
  • 病気の進行に伴う全身の症状
    • 発熱
    • 体重減少
    • 寝汗が多い

骨髄線維症の検査・診断

  • 血球検査
    • 赤血球数、血色素量の低下
    • 血小板数の異常(減少する場合も、増加する場合もある)
  • 末梢血塗抹検査(特に以下の有無を確認する)
    • 芽球の出現
    • 赤芽球の出現
    • 涙滴状赤血球の出現
    • 巨大血小板の出現
  • 骨髄検査
    • 腰骨や胸の骨から骨髄を採取して顕微鏡で様子を確認する
  • 画像検査
    • CT検査、MRI検査、腹部エコー検査などで肝臓や脾臓の腫れの程度を確認する
    • 骨髄シンチグラフィPET検査などで、骨髄以外のどこで血液が作られているか確認することがある
  • 遺伝子検査
    • 採取した血液を使って行う特殊な検査
    • 約50%の患者でJAK2変異、約20-30%の患者でCALR変異、約5-8%の患者でMPL変異という遺伝子変異が検出される

骨髄線維症の治療法

  • 診断後、まずは症状の強さ、重症度を判定する
    • MPN-SAF-TSS(骨髄増殖性腫瘍症状評価フォーム総症状スコア)などで症状を評価する
    • 治療方針決定のために予後予測を行う
    • 以下に当てはまるものが多いほど予後不良とされる
      • 年齢65歳以上 
      • 37.5°C以上の発熱、発汗、6ヶ月で10%以上の体重減少
      • ヘモグロビン(Hb)<10g/dLの貧血
      • 白血球数>25,000/μL
      • 幼弱な白血球(芽球)の増加 (末梢血で1%以上)
      • 血小板<10万/μL
      • 輸血が必要
      • 染色体核型(3種類以上の複雑核型など)
    • 生存期間の平均は4年ほどと報告されている
  • 低リスク、または中間リスク-1の治療方針
    • 症状が乏しければ様子をみるだけでもよい
    • 症状がある場合には輸血や薬物治療(プリモボラン®の内服など)を行う
  • 中間リスク-2、高リスクの治療方針
    • 適切なドナーがいる場合には、同種造血幹細胞移植を検討する
    • 移植が難しい場合にはJAK阻害薬であるジャカビ®の内服を行う
      • JAK2変異が検出されていない患者さんでも効果が期待できる
  • その他に行われることがある治療
    • ステロイド薬の内服
    • 放射線治療脾臓に照射し、脾腫の改善を図る)
    • 脾臓の摘出手術

骨髄線維症に関連する治療薬

ルキソリチニブ(JAK阻害薬)

  • JAKという血液系細胞の分化や増殖などに関わる酵素を阻害することで、骨髄線維症や真性多血症などの症状を改善する薬
    • 骨髄線維症や真性多血症などの骨髄増殖性腫瘍は造血幹細胞の異常により、骨髄系の細胞の異常な増殖などを引き起こす
    • 骨髄増殖性腫瘍の病因にはJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素の異常な活性化などが深く関わっているとされる
    • 本剤はJAK(JAK1及びJAK2)を阻害する作用をあらわす
ルキソリチニブ(JAK阻害薬)についてもっと詳しく

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