こうじょうせんずいようがん
甲状腺髄様がん
甲状腺がんの一種。約3割は遺伝により発症することが分かっている。
8人の医師がチェック 138回の改訂 最終更新: 2017.11.30

甲状腺髄様がんの基礎知識

POINT 甲状腺髄様がんとは

甲状腺がんの1.5%を占め、遺伝が原因となることがあります。遺伝性では副腎や副甲状腺にも腫瘍を認めることがあります。症状は甲状腺のしこりが最も多く、がんが進行すると、声帯を動かす神経が麻痺して声がれがでたり、飲み込みにくさなどの症状がでます。診断は頸部超音波検査や頸部CT検査を行い、腫瘍に針を刺して細胞を調べる検査を行います。その他に、腫瘍マーカーの検査や希望に応じて遺伝子検査を行うことがあります。治療は進行度に応じて手術をしますが、遺伝性の場合は甲状腺を全て摘出します。肺や肝転移を起こしますが、手術後の10年生存率は60〜80%です。甲状腺のしこりを自覚し、家族に甲状腺髄様がんがいる場合は、超音波検査などで調べてみてもいいかもしれません。一般内科、耳鼻咽喉科や甲状腺外科などに受診しましょう。

甲状腺髄様がんについて

  • 甲状腺がんの一種で、甲状腺がんの1.5%を占める
    • カルシトニン(カルシウム濃度を下げるホルモン)を出す細胞から生まれるがん
  • 遺伝が原因となることがある
    • 約30%が遺伝性、約70%が非遺伝性(散在性)
    • 遺伝性であるかどうかで、治療方針が異なる
  • 遺伝性髄様がんの種類
    • 多発性内分泌腺腫症2型(Multiple Endocrine Neoplasia type 2:MEN2型)と家族性髄様がん(Familial Medullary Thyroid Carcinoma:FMTC)がある
    • 遺伝形式は常染色体優性遺伝
      • 親の片方が遺伝子変異を持っている場合、半数の子供に遺伝する可能性がある
    • 遺伝性の95%にRET遺伝子の変異がある
    • 多発性内分泌腫瘍症2型は2種類ある
      • MEN2Aは副腎の褐色細胞腫、副甲状腺過形成を合併する
      • MEN2Bは副腎の褐色細胞腫、粘膜下神経腫、マルファン様体型(手足が長い)などを合併する
    • 遺伝性の甲状腺髄様がんは、甲状腺全摘術を行う
  • 初期は無症状であることが多い

甲状腺髄様がんの症状

  • がんの早期は無症状であることが多い
    • 健康診断などで偶然見つかることもある
  • がんが大きくなると、甲状腺のしこりとして触れる
    • 首のリンパ節転移すると、首にしこりを触れることがある
  • がんが進行すると声がれや、飲み込みづらさが出ることがある
    • 声帯を動かす神経が麻痺して声がれが起こる
    • 声帯が麻痺すると、むせやすくなり、飲み込みにくさが出る
    • がんが大きくなると、のどの圧迫感や飲み込みにくさが出ることがある

甲状腺髄様がんの検査・診断

  • 頸部超音波検査エコー検査)
  • 喉頭ファイバースコープ検査
    • 声がれがある場合には、声帯の麻痺がないかを調べる
    • 鼻から細くて柔らかいカメラを入れて、のどの奥を観察する
  • 血液検査
  • 遺伝子検査
    • 遺伝性髄様がんの95%にあるRET遺伝子変異を調べる
    • 現時点では、RET遺伝子検査は保険適応外
  • 病理検査
    • がんを疑うしこりに針を刺して細胞を取り、悪性の細胞がないかを顕微鏡で調べる
  • CT検査
    • 頸部CT検査で甲状腺の腫瘍の位置や、周囲のリンパ節の腫れを調べる
    • 遺伝性髄様がんでは、腹部から骨盤のCT検査で、副腎に腫瘍がないかどうかを調べる
  • PET-CT検査
    • 全身に転移がないかどうかを調べる

甲状腺髄様がんの治療法

  • 手術でがんを切除するのが治療の原則

    • 散在性の甲状腺髄様がんの場合
      • がんの広がりの程度で手術の範囲を決める
      • 甲状腺全摘術:甲状腺をすべて摘出する
      • 甲状腺葉峡部切除術:がんのある甲状腺を半分摘出する
      • 気管周囲のリンパ節も摘出する
    • 遺伝性髄様がんの場合
      • MEN2Aでは褐色細胞腫が30-70%に合併する
      • 褐色細胞腫がある場合は、褐色細胞腫の治療を優先する
      • 甲状腺全摘術を行う
      • 手術の時点で腫瘍が片側にしかない場合も、将来残した甲状腺から再発する可能性が高い
  • 放射性ヨード内用療法

    • 他の甲状腺がんでは有効だが、髄様がんに対しては効果がない
    • 通常と異なる放射性ヨード(I-131MIBG)を用いた治療方法もあるが、日本では未承認
  • 放射線治療:外照射

    • 摘出できなかった髄様がんに、体の外から放射線を当てる治療
    • 放射線外照射の治療効果は少なく、あまり行われない
  • 化学療法

    • 抗がん剤を用いた治療法は髄様がんでは効果に乏しい
    • 分子標的薬の保険適応がある
      • 根治的治療ではなく、進行を抑制する治療
      • 進行した髄様がんでは分子標的薬を使用した場合も使用しない場合でも、生存期間に差がないため、急速な進行などの場合に限って行われる
  • 想定される経過が良くないものの要因として以下のものがある

    • 診断時の年齢が50-60歳以上
    • 男性
    • 診断時にリンパ節転移がある
    • 診断時に遠隔転移がある
    • がんが甲状腺を包む膜(被膜:ひまく)の外に出ている
    • 全摘術をしない場合
    • がんが残存する手術をした場合
  • 手術後の定期検診

    • 再発の有無を確認するため、定期的な受診が必要
    • 血液検査
      • カルシトニン
      • CEA
    • 画像検査
      • 超音波検査
      • CT検査
      • PET-CT検査 など
    • 甲状腺がんは再発までの期間が長く、長期的な通院が必要
  • 10年生存率は75%

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