まんせいすいえん
慢性膵炎
膵臓が作る消化酵素の影響を受けて膵臓自体に慢性的な炎症が起こることで細胞が変性し線維化や石灰化などが生じる病気。進行すると膵臓の消化酵素やホルモンが適切に放出できなくなる
9人の医師がチェック 86回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 慢性膵炎のQ&A

    慢性膵炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    膵臓でつくられる消化液が膵臓自身を部分的に消化したり、そしてその傷が治ったり、と繰り返す中で、徐々に膵臓全体の機能が低下してきてしまうのが慢性膵炎です。傷が治るたびに膵臓の細胞が機能を失い、「線維化」といって硬くなっていってしまうのが特徴です。たとえば植物は枯れると細胞が働かなくなって茶色く硬くなりますが、人間の細胞も同じように、機能を失って硬くなってきてしまいます。

    慢性膵炎の原因としては、お酒が原因のアルコール性慢性膵炎が最も多く、全体の56%を占めています。一方で、原因不明のもの(特発性と呼ばれます)も18%程度あります。

    このほかに、胆石症や、生まれつき膵管の形が人と違う場合、そして脂質異常症などが原因となることもあります。

    慢性膵炎の原因には男女の違いがあることも知られています。男性の場合、原因の約70%はアルコール性ですが、女性では24%程度にすぎません。女性では約45%が原因不明とされています。また、タバコも慢性膵炎の発症率を高めるだけでなく、慢性膵炎の進行を早める要素です。

    慢性膵炎の症状について教えて下さい。

    初期によく見られる症状は、お腹の上側の痛み、また背中や腰の痛みです。そのほか、吐き気や嘔吐、お腹の張りや違和感、全身のだるさなどがあります。腹痛は食後数時間してからあらわれ、前かがみになると軽くなる特徴があります。

    慢性膵炎はどのように診断するのですか?

    まず始めに、慢性膵炎を考える症状としては、お腹の上側の痛みや、背中、腰の痛みといったもの、そしてアルコール摂取量が多いなどの病歴があります。これらの情報をもとに慢性膵炎を疑ったら、最初に行われる検査は血液検査、尿検査、腹部レントゲンです。血液や尿検査ではアミラーゼなどの消化酵素(膵酵素)の値が高いことが診断の手がかりになります。腹部レントゲンは結石がある慢性膵炎の診断に有用です。

    画像検査としては、いくつかの重要な検査があります。腹部エコー、CT、MRI、内視鏡を必要に応じて使い分けます。内視鏡は胃カメラと同じような検査ですが、先端にエコー(超音波)機器がついているものもあり、体内からエコーを当てるためにより詳しい部分まで確認ができます。また、ERCPといって、内視鏡を入れながらレントゲンを撮影する手法があり、これは膵臓周囲の様子が最もはっきりと分かる有用な検査です。

    慢性膵炎の治療法について教えて下さい。

    慢性膵炎は経過の長い病気です。その症状は、病気の進み具合やさまざまな合併症で変化しますので、治療法も異なってきます。

    慢性膵炎の治療法は、生活指導とともに食事治療、薬物治療が基本であり、こちらは外来通院で行える治療です。しかし途中で病状が悪化した場合には内視鏡治療や外科手術が必要となるため、進行すると入院治療の繰り返しが必要となる場合もあります。

    慢性膵炎の治療に最も大切なのは禁酒です。喫煙も慢性膵炎の進行を早めるので、禁煙も大事です。禁酒・禁煙はたいていの病気に大事なことではありますが、慢性膵炎は特にこれらの重要性が極めて高い病気です。

    腹痛や背中の痛みに対しては、禁酒、食事中の脂肪を減らす、内服薬(蛋白分解酵素阻害薬)を基本とした治療を行います。消化吸収機能が弱ってしまうため、消化を助ける膵消化酵素薬を内服したり、慢性膵炎によって引き起こされた糖尿病に対してはインスリンなどの治療を行います。

    慢性膵炎はどのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    慢性膵炎の患者数は全国で47,000人、人口10万人あたり約37人です。

    慢性膵炎は男性に多い病気で、女性の約2.5倍の頻度です。

    慢性膵炎のその他の症状について教えて下さい。

    初期の慢性膵炎では、腹痛が主な症状です。この段階(代償期と呼ばれます)ではまだ膵臓に余力があり、適切に治療を行えばある程度まで元通りに治ることができます。

    一方で、この病気が進行すると正しく機能する膵臓の細胞がだんだんと減ってしまいます。この段階(非代償期)になると、治療によって進行をゆっくりにすることはできても、膵臓が元通りになることは困難です。

    非代償期の症状としては、下痢、脂肪便(黄色みを帯びた白色の、量の多い、脂の浮いた便)、体重減少などの症状があります。また、慢性膵炎によって糖尿病を起こす方が多く、糖尿病の症状としてのどの渇きやすさや、尿量の増加などが出現します。

    慢性膵炎の約半数では、膵石が生じます。膵石とは、膵臓の中にできたカルシウムの固まりです。膵石がによって消化液の流れが悪くなって腹痛が強くなり、また膵臓の機能が低下する原因となります。

    慢性膵炎と膵臓がんはどのように区別するのですか?

    膵臓がんも慢性膵炎と同じく、膵臓に異常が生じる病気です。血液検査で消化酵素(アミラーゼなど)の値が高くなったり、CTで膵管がでこぼこになったりするといった特徴は、両者に胸痛しています。

    これらの区別にはいくつかの方法があります。ERCP(内視鏡を口から入れながらレントゲンを撮影する方法)で、がん細胞がいないかを確かめる方法が基本です。がん細胞は、消化液の中にいる場合もありますし、膵臓がんの疑いがある固まりがあるのであれば、そこに内視鏡から針をさして直接細胞をとって来て検査をするやり方もあります。

    慢性膵炎のその他の治療法について教えて下さい。

    狭くなった膵管や膵石が、腹痛・背中の痛みの原因と考えられる場合、内視鏡(胃カメラ)を用いた治療を行います。慢性膵炎の内視鏡治療は、膵管の中に形成された膵石を内視鏡で除去する「内視鏡的膵石除去術」と、慢性の炎症により狭くなった膵管を広げる「内視鏡的膵管拡張術」に分けられます。それぞれについては、以下の項目で別に解説します。

    内視鏡的膵石除去術

    内視鏡的膵管拡張術

     

    慢性膵炎によっておきる病気(合併症)にはどのようなものがありますか?

    慢性膵炎の合併症としては、膵臓の中を通る胆管が狭くなってしまうこと(胆管の狭窄)や、炎症が膵臓の外に広がることで膵液がたまった袋ができる仮性のう胞、そして仮性のう胞や膵管が破れて腹や胸に膵液がたまる腹水・胸水があります。

    症状のあるこれらの合併症の治療には、まずは胆管や膵管にステントを挿入したり、経胃的のう胞ドレナージ(のう胞の内部に溜まった液体を、針を指して外に流し出すこと)などの内視鏡治療を行います。なおステントとは、金属やビニールでできたストローのようなもので、狭くなっている胆管や膵管を内側から補強する役割をもつ医療器具です。しばらく入れっぱなしにしておくと内側が詰まってしまうため、定期的に交換する必要があります。

    内視鏡治療などの治療が行えない場合や効果がない場合は、手術を行います。

    慢性膵炎のその他の検査について教えて下さい。

    膵臓には主に二つの働きがあります。一つは、消化酵素(膵酵素)を出して食べ物を消化する働きです。これを外分泌機能と呼びます。もう一つは内分泌機能と呼ばれ、消化管から吸収されたブドウ糖をうまく利用するためにインスリンというホルモンを分泌する働きになります。慢性膵炎が進行すると、消化酵素がうまく出せなくなって、栄養がうまく吸収できなくなったり、下痢になったりします。また、インスリンの分泌がうまくいかなくなると糖尿病が起こります。

    したがって、慢性膵炎の検査には、外分泌と内分泌、それぞれの機能が低下していないかを判断するものがあります。

    外分泌機能が低下すると、脂肪便といって黄色みを帯びた白色の、量の多い、脂の浮いた便が出るようになります。また、特殊な尿検査で外分泌機能を測定することも可能です(BT-PABA試験)

    内分泌機能は、血液検査で判定します。血糖値やHbA1cといった測定値が重要です。

    慢性膵炎の「内視鏡的膵石除去術」について教えて下さい。

    内視鏡(胃カメラ)を進めると、胃の先には十二指腸があります。十二指腸と膵臓は細い入り口でつながっているので、そこまで進めた内視鏡の先から細いワイヤーを出して、膵臓の中を進めていくことができます。

    5mm以下の小さな膵石は、内視鏡の先から細いワイヤーのような器具を出し入れすることでそのままかき出すことができます。一方で、膵石が大きくて難しい場合には、衝撃波を発生する装置で膵石を細かく砕くことが多いです。小さくなった膵石は、先述のようにかき出して、そのまま便と一緒に流れていきます。

    慢性膵炎の経過について教えてください。

    慢性膵炎は膵臓の炎症が繰り返し起きる病気です。残念ながら治療により完治することは難しいのが現状です。一生つきあわなければならない病気ではありますが、日常生活の管理、禁酒、食事の脂肪制限、適切な薬物治療によって、進行を遅らせることは可能です。

    慢性膵炎で亡くなった人の平均年齢は男性67.2歳、女性68.7歳と、長寿社会のわが国の平均寿命より10歳以上若いとされています。慢性膵炎の患者さんの主な死亡原因は悪性腫瘍(がん)、肝不全・肝硬変、腎不全、栄養障害、糖尿病です。悪性腫瘍の中でも膵臓がんで亡くなる方が多いです。日々の生活に気を払うと共に、定期的に外来で検査を受けるようにしましょう。

    慢性膵炎と診断が紛らわしい病気はありますか?

    慢性膵炎と紛らわしい症状をあらわす中で、もっとも注意しなければならない病気として、膵臓がんがあります。腹部や背中の痛み、食欲の低下、体重減少が主な症状です。慢性膵炎と膵がんを初期の段階で見分けるのは難しく、特に慢性膵炎と膵臓がんが両方ある場合もあるため、診断のために慎重に検査を重ねていきます。

    膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)という病気もCTやMRIでの写り方が慢性膵炎と似ており、急性膵炎を繰り返す点や黄疸といった症状も似ているため、こちらも検査を追加してどちらの病気であるかを判断していくことになります。

    慢性膵炎の「内視鏡的膵管拡張術」について教えて下さい。

    内視鏡(胃カメラ)を進めると、胃の先には十二指腸があります。十二指腸と膵臓は細い入り口でつながっているので、そこまで進めた内視鏡の先から細いワイヤーを出して、膵臓の中を進めていくことができます。

    膵臓内で狭くなった部分(膵管の細い部分)までワイヤーを入れたら、そのワイヤーづたいに細いプラスチック製のチューブ(ステント)を挿入します。このステントが入れば、膵管が内側から補強されるので、まわりから押しつぶされてしまうことが無くなります。のステントは長期間入れっぱなしにしておくと詰まってしまうため、定期的に交換する必要があります。

    慢性膵炎には内視鏡治療以外の治療法はありますか。

    内服薬や内視鏡(胃カメラ)の治療を行っても腹痛などの症状が治まらない場合や、あるいは膵臓がんと診断上区別がつかない場合には手術を行います。痛みに対する手術は、膵管ドレナージ手術(膵臓内の詰まりを取り除く手術)と、痛みの原因となる膵臓の炎症部分を切り取る膵切除術があります。膵管ドレナージ手術でも切除術でも、手術により90%以上の患者さんが痛みから解放されます。

MEDLEYニュース新着記事