Beta 手指伸筋腱損傷のQ&A
手指伸筋腱損傷の原因、メカニズムについて教えて下さい。
手指伸筋腱損傷は、指を伸ばす筋肉の腱が損傷した状態をさします。 手を伸ばす腱が損傷する原因は、動物に噛まれるなどの外的な損傷を伴うもの、突き指などの理由によるもの、手首の骨折や関節リウマチによる手関節の変形、キーンベック病(手首の骨の骨折)などの疾患に伴って生じるものがあります。 手の甲は腱を保護する組織が少ないため、外的な障害による損傷は、屈筋腱損傷より頻度が高いことが知られています。
手指伸筋腱損傷は、どんな症状で発症するのですか?
手の痛みや腫れ、指が伸ばせなくなる、手を握る力が入らなくなるなどの症状がみられます。どの指や関節が伸ばせなくなるかは、損傷や骨折、変形が生じている部位によって異なります。時おり、手の痺れが生じることもあります。 関節リウマチや変形性関節症、キーンベック病などの疾患などの疾患が原因により徐々に腱が損傷する場合は、スワンネック変形やボタンホール変形といった特徴的な指の形になることがあります。
手指伸筋腱損傷に関して、スワンネック変形やボタンホール変形とはどのような変形ですか?
・ボタンホール変形
指の第二関節部の指を伸ばす腱が切れてしまうことで生じます。そのため、第二関節が曲がり、第一関節が伸びたように指が固まります。
・スワンネック変形
第一関節が曲がり、第二関節がそるように伸びた状態で指が固まった状態となります。
リウマチが原因でみられることが多くあります。
手指伸筋腱損傷は、どのように診断するのですか?
手首、てのひら、指(てのひら側)に怪我をした後、指の関節が伸びにくくなったということを確認します。また、骨折の有無を調べるためのレントゲンや、レントゲンではわからない骨折を詳細に調べるためにCTを行い診断することもあります。
手指伸筋腱損傷を診断するときに注意することはありますか?
外的な障害によって指の腱が断裂した場合、手指が伸ばしにくくなります。しかし、損傷している腱に結合した手首の腱が、手を伸ばす働きを助けるため、ある程度指を伸ばすことが可能となります。そのため、腱が損傷しているかどうかを指の動きだけで診断するには注意が必要です。
手指伸筋腱損傷とばね指の違いについて教えて下さい。
ばね指は、指を曲げる腱と腱が通る腱鞘の間でおこる炎症です。指の痛みや腫れ、指が動かない状態になるなど、伸筋腱の中央索(指の第二関節の外側に通る腱)損傷と似た症状が生じます。
Elson testと呼ばれるテスト(第二関節を曲げた状態で、第一関節が外側に曲がれば損傷があることを示す)を行いどちらの疾患であるかを診断します。
手指伸筋腱損傷の治療法について教えて下さい。
多くの場合、手術が行われます。手術は、損傷した部分を縫い合わせる腱縫合術や、切れた腱に他の腱を移植する腱移植術が行われます。関節リウマチや変形性関節症、キーンベック病などの疾患により、腱が断裂した場合も手術が必要になります。
手術が行われないのは、つち指(第一関節のみが曲がった状態になる疾患)が軽度であったときのみです。この場合、約8週間、関節を伸ばした状態で固定する保存療法が行われます。
手指屈筋腱損傷の手術が終わったら、すぐに手を使えるようになりますか?
手術によって、腱同士を縫い合わせることは可能ですが、周りの腱や腱のトンネルである腱鞘と腱が癒着してしまう可能性があるため、指を曲げる動きを改善させるためのリハビリテーションが行われます。腱がしっかりとくっつき、指の関節が病前のように動くようになれば、治療は終了します。治療が完了するまでの期間は、12週間以上とされています。
手指屈筋腱損傷では、どのようなリハビリテーションが行われますか?
伸筋腱は細く伸ばされやすいため、慎重なリハビリテーションが必要です。概ね、4-5週間の固定期間があり、続いて自力で手を動かすことで関節の動きをよくしていきます。 指を動かして良い時期やその負荷量は損傷された指によって異なるため、ハンドセラピストと呼ばれる手の外科専門のスタッフが在籍している病院でのリハビリテーションが望ましいとされています。
手指伸筋腱損傷に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
手指伸筋腱損傷には、外的要因のものと内的要因のものがあります。外的要因の場合、刃物などを扱う際には、手袋を着用するなどの予防方法が挙げられます。内的要因の場合、準備運動をしたり、テーピングなどを行うことで突き指などの予防が可能です。関節リウマチや変形性関節症などの病気の場合は、指に違和感があれば病院を受診し、原因となる疾患が進行しないように早期から治療を行うことが予防方法の一つといえます。