きょうせんしゅ、きょうせんがん
胸腺腫、胸腺がん
胸腺から発生する良性および悪性の腫瘍
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最終更新: 2021.03.15
胸腺腫、胸腺がんの基礎知識
POINT 胸腺腫、胸腺がんとは
胸腺腫も胸腺がんも胸骨の裏にある胸腺という組織できる腫瘍です。腫瘍内の細胞の性質によって胸腺腫と胸腺がんは異なります。また、胸腺腫では重症筋無力症や赤芽球ろうという病気を合併しやすいことが分かっています。主な症状は胸の痛み・咳・痰・呼吸困難感などですが、合併症が出現することによって息切れや力が入りにくいなどの症状が現れることもあります。無症状のうちに見つかるケースも多いです。 画像検査で疑われることが多いですが、腫瘍の細胞を採取して顕微鏡で調べることで診断が確定します。治療は手術を基本として、腫瘍の進行度によって化学療法や放射線療法を行います。胸腺腫や胸腺がんが心配な人や治療したい人は、呼吸器外科を受診して下さい。
胸腺腫、胸腺がんについて
胸腺腫、胸腺がんの症状
- 胸腺の
腫瘍 自体の症状 と、合併症 による症状との2つに大きく分かれる - 腫瘍による症状
- 初期は自覚症状がないことが多い
- 腫瘍が大きくなることで、周囲の臓器を圧迫する、浸潤することによって以下の症状が現れる
- 胸の痛み
- 咳
- 呼吸困難
- 顔や首の
うっ血 、むくみ (上大静脈症候群)
- 合併症
- 合併症による症状
胸腺腫、胸腺がんの検査・診断
胸腺腫、胸腺がんの治療法
腫瘍 の進行度合い(ステージ )と全身状態から治療法が選択される- 主な治療
- 手術
放射線療法 化学療法
- 手術:基本的には中心となる治療
- 腫瘍を全て取り切れて、かつ手術に耐えられる状態ならば基本的に手術が選択される
- 胸骨(胸の真ん中の骨)を縦に切断して、腫瘍を周囲の脂肪と一緒に切除する方法がスタンダードである(拡大胸腺摘出術とよぶ)
- 近年は初期の胸腺腫であれば、
胸腔鏡 手術で切除することもある内視鏡 を利用した、傷口の小さくて済む方法である- 手術時間が長くなりやすい点、腫瘍の取り残しが起こりやすい可能性がある点など懸念はあり、拡大胸腺摘出術との優劣に関しては現時点で不明
- 放射線療法
- 手術後に再発予防として行われることがある
- 手術ができない場合や再発例などで、痛みをやわらげる目的で行われることがある
- 手術ができない場合に、化学療法(
抗がん剤 )と組み合わせて行われることがある
- 化学療法
- 一般的には胸腺腫は進行が遅いが、中には
悪性度 が高い胸腺腫があり、進行が早いものもある 5年生存率 は胸腺腫で約90%、胸腺がんで約55%という報告があるが、病期 (ステージ)によって大きく異なる- 手術や放射線などで治療した後も、長年経過してから再発することがあるので、胸腺腫の場合には少なくとも10年、胸腺がんの場合には5年は定期的に
CT やMRI を撮影するのが一般的