ひそちゅうどく
ヒ素中毒
急性ヒ素中毒と慢性ヒ素中毒に分かれる。急性ヒ素中毒は命に関わることがある
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最終更新: 2022.06.16
ヒ素中毒の基礎知識
POINT ヒ素中毒とは
ヒ素の摂取による中毒です。ヒ素にも様々な種類がありますが、三酸化ヒ素(亜ヒ酸)と呼ばれるものが最も毒性が強いとされています。また、急性中毒と慢性中毒があり、急性中毒はヒ素を食べたり吸い込むことで急激に起こる中毒であり、慢性中毒はヒ素を扱う作業などを長年行うことで起こる中毒です。1998年に起きた和歌山毒物カレー事件は、三酸化ヒ素の急性中毒によるものでした。 急性ヒ素中毒の症状としては、吐き気、腹痛、下痢などが見られ、重症になると発熱、不整脈、意識がもうろうとするなどの症状が出現して命の危険があります。慢性ヒ素中毒の症状としては、皮疹ができる、皮膚がんや肺がんなどにかかりやすくなる、鼻や肺の粘膜に障害が起きる、手足がしびれる、痩せてくる、などがあります。 ヒ素の取り扱いや摂取歴がないかをよく聴取し、尿や毛髪中のヒ素を検出するなどして診断します。 治療としては、ジメルカプロールの筋肉注射や、症状に応じた補助的な治療が行われます。ヒ素中毒が心配な人や治療したい人は救急科を受診してください。
ヒ素中毒について
- 急性ヒ素中毒と慢性ヒ素中毒に分かれる
- 急性ヒ素中毒
- 亜ヒ酸を飲み込んだり、吸い込んだりしたことにより起こる
- 昔から自殺や他殺にしばしば使われていた
- 慢性ヒ素中毒
- 長期にわたって少量ずつ、
ヒ素 を摂取したり、吸い込んだりし続けた場合に起こる - 鉱山での仕事や、もともとヒ素を含んだ土地に住んでいる人に起こりやすい
- 長期にわたって少量ずつ、
ヒ素中毒の症状
ヒ素中毒の検査・診断
- 急性ヒ素中毒
- 蛍光X線分析法:吐物中の
ヒ素 を調べる 腹部レントゲン :ヒ素があるか調べる- 胃のなかのヒ素が写ることもある
- 尿検査:尿中にヒ素があるか調べる
- 摂取後数時間で尿中のヒ素が上昇し、高値は数か月続く
- 数日たつと毛髪中のヒ素も上昇する
- 蛍光X線分析法:吐物中の
- 慢性ヒ素中毒
- 職業性の場合は、ヒ素にさらされた期間と作業環境中のヒ素濃度を調べる
- 眼、鼻、口の粘膜刺激
症状 、皮膚症状、末梢神経炎の確認
ヒ素中毒の治療法
- 急性ヒ素中毒
- 摂取から数時間以内の場合にはすみやかに吐かせ、胃の洗浄を行う
- 数時間以上たっている場合は、下剤や活性炭の内服を行い、解毒と排泄を促す
- キレート剤(毒物を解毒する物質)としてジメルカプロール(BAL)を使用することがある
- 摂取の後、すぐ使用することが大切
輸液 を十分に行い、水分と電解質 の管理を行う- その他、状態の応じて呼吸管理、
対症療法 を行う - 少量の摂取のみであれば、嘔吐や下痢のあと半日以内に自然に軽快することもある
- 最重症では
透析 を行うこともある
- 慢性ヒ素中毒
- 治療薬として、ジメルカプロール(BAL)が使われてきた
- 全身性の黒皮症は
ヒ素 のある環境から離れると徐々に軽快する 色素沈着 や白斑は持続的であり、角化症も改善しにくい傾向にある- 末梢神経炎は軽度であれば治りうる