大腿骨骨幹部骨折の基礎知識
POINT 大腿骨骨幹部骨折とは
太ももには大腿骨という太い骨が一本通っています。大腿骨のうち股関節に近い部分を近位部、膝に近い部分を遠位部、それらの中間を骨幹部と呼びます。大腿骨骨幹部骨折は、大腿骨の中央部が折れた状態です。骨粗鬆症がある高齢者が転倒した場合、交通事故・転落事故で起こることが多いです。症状としては太ももに強い痛みが生じて歩行が困難になります。太ももは筋肉が多く血流が豊富なので、骨折による出血で大きく腫れ上がることもあります。診断は診察とレントゲン(X線)検査で行い、必要に応じてCT検査なども行われます。また、大腿骨以外にも大きなケガがないか、という点もあわせて調べられます。治療は原則として手術を行います。大腿骨骨幹部骨折が心配な方や治療したい方は整形外科や救急科を受診してください。
大腿骨骨幹部骨折について
大腿骨骨幹部骨折の症状
- 膝、太もも、股関節の付け根のどれかまたはすべてに強い痛みが見られる
- 歩行は不可能
- 太ももの変形(まっすぐでなく、関節でない部分で曲がってしまう)
- 皮
下血 腫(青あざ)
大腿骨骨幹部骨折の検査・診断
大腿骨骨幹部骨折の治療法
- 治療法は子どもと大人で異なる場合がある
- 主な治療
- 子どもの場合(小学生までが目安)
- 骨がくっつきやすいので、手術を行わないことも多い
- 骨折してずれた骨を引っ張り、まっすぐに戻した状態で骨折部の骨が再接着するのを待つ
- ただし、ずれが大きい場合には針金のような金属を入れる手術が行われる
- 中学生以上の場合
- 主に手術を行う
- 大腿骨はちくわのように骨の中が空洞に近い(実際は骨の内部にはスポンジ状の弱い骨の組織がある)ため、その中に太い釘(髄内釘;ずいないてい)を入れて、上下に数本のネジで固定する
- この方法の方が治療にかかる時間が短い
- ただし、折れ方によってはしばらく足に体重をかけることができない
- 骨が皮膚から突き出ている
開放骨折 や、骨折部が感染している場合- 時には、創外固定(そうがいこてい)法が行われる
- 骨に金属の棒を添えて、骨折部の上下にネジで固定する
- 金属の棒で、上下の骨がつながることになる
- 後日金属の棒とネジは取り外す
- 子どもの場合(小学生までが目安)
- 骨の変形のため、足が短くなったり、ねじれて骨がついたりすることがある
大腿骨骨幹部骨折の経過と病院探しのポイント
大腿骨骨幹部骨折が心配な方
大腿骨骨幹部骨折は、大腿骨(太ももの骨)に起きる骨折で、交通事故などで大きな衝撃が加わった際に生じやすい外傷です。このような事故の後から太ももが痛くて足が動かせない場合には、大腿骨骨幹部骨折の可能性があります。その他に似た症状を来たす状況としては肉離れ(筋断裂)などがあります。骨が明らかに曲がっているといったような場合はすぐに分かりますが、それ以外のときにご自身で大腿骨骨幹部骨折と診断するのは必ずしも容易ではありません。
ご自身の症状が大腿骨の骨折でないかと心配になった時、まずは整形外科のクリニックや、お近くの救急外来を受診されることをお勧めします。痛みで全く立ち上がれないという時には救急車での受診が良いでしょう。歩いての受診が可能で、結果的に骨折ではなく筋肉や靱帯の問題であればクリニックで対応が可能です。もし診断が大腿骨骨幹部骨折で手術が必要となる場合には、レントゲン(X線)検査やその他行われた診察、検査の結果をまとめた診療情報提供書(紹介状)とともに、手術可能な病院を紹介してもらうことになります。
受診先として、総合病院の救急外来は相対的に待ち時間が少ないというメリットもある一方で、専門の整形外科医ではなく広く浅く診察をする救急医やその他の当番医などが初期対応に当たることも多いです(日中は救急外来が開いていないこともあります)。総合病院の整形外科外来は、飛び込みで受診するには患者数が多く(待ち時間が長く)、また診療情報提供書を持っていないと受診ができなかったり、追加料金が必要となったりします。
大腿骨骨幹部骨折でお困りの方
大腿骨骨幹部骨折の場合、成人であれば原則は手術が必要です。ただしご高齢の方や心臓、肺、その他の臓器に持病がある方などで手術を行うリスクが大きい場合には、自然に骨がつくのを待つこともあります。また小児の場合には牽引療法といって、入院の上で骨折した足の先に重りを固定して、引っ張った状態で過ごしながら骨折が治るのを待つ治療も行われます。大腿骨骨幹部骨折は、診断がつき次第その場で治療が開始されますので、どこでどのような治療を受けるかを迷う余地は少ない疾患かもしれません。
手術後は、あまり安静にし過ぎているとかえって関節が固まって動かしづらくなってしまうため、痛みに耐えられる範囲で早期からリハビリテーションを開始していきます。
ご高齢の方で入院中に筋力が低下してしまったり、以前のように歩くことが難しくなってしまった場合には長期間のリハビリテーションが必要となります。一人で日常生活を行うことができないような場合には、急性期病院から回復期病院(リハビリ病院、療養型病院)に転院して、リハビリを行います。
急性期病院にも一般的にリハビリの施設はついていますが、回復期病院の方がリハビリに専念しやすい環境が整っています。一緒にリハビリを行うことになるのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったスタッフですが、患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を探す上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、1日に受けられるリハビリの総時間、土日はどうかといった点も、回復期の病院を探す上でのポイントとなります。