がんぐりおん
ガングリオン
手首や指の関節の周囲にしこりができる病気
6人の医師がチェック 100回の改訂 最終更新: 2024.08.28

ガングリオンの治療:治療の対象となる人、穿刺吸引治療、手術、再発率など

ガングリオンは治療を必要としないこともありますが、「痛みやしびれなどの症状がある場合」や「見た目が気になる場合」には治療が検討されます。ここでは、ガングリオンの治療について詳しく説明します。

1. ガングリオンを治療するのはどんなときか

ガングリオンができても中のゼリーが悪さをすることはまずないので、基本的には様子見ができます。しかし、次の条件に当てはまる人は治療が検討されます。

  • 痛みやしびれなどの症状がある
  • 見た目が気になる

ガングリオンはいわゆるがんのような悪性の病気ではありません。つまり、そのまま放置しておいても生命をおびやかされることはありません。そのため、「痛みやしびれなどの症状がある人」や「見た目が気になる人」が治療の対象になります。

しこり以外の症状がない人や見た目がさほど気にならない人は治療をするか迷うこともあると思います。

治療に踏み切るかどうかの判断を下すためには、良い点(治療によって得られる効果)も悪い点(治療にともなう副作用など)もお医者さんからよく聞いて、しっかりと相談することが大切です。効果や副作用を知っておくことで、自分の考えに合った選択をすることができます。

例えば、ガングリオンが目立ちやすい場所にできている人は、傷が残らない穿刺吸引治療(針を刺してガングリオンの中の液体を抜く治療)を選ぶほうが、治療後に見た目の苦労がありません。一方で、穿刺吸引治療後には再発率が高いため、再発した場合の治療についてもあらかじめ理解しておくことが望まれます。

ガングリオンの人が知っておきたいこと」では治療の前に知っておきたいことをまとめているので治療をするかどうかの判断に迷っている場合には、こちらも参考にしてください。

2. ガングリオンの治療

ガングリオンの治療には主に2つの方法があります。

  • 穿刺吸引治療:針を刺して中身を抜く治療
  • 手術(外科的治療)

それぞれの治療法の特徴と、2つの治療法を比較して説明します。

穿刺吸引治療:針を刺して中身を抜く治療

ガングリオンの中身はゼリー状の液体です。そこに針を刺して液体の部分を抜けばガングリオンをしぼませることができます。中身が取り除かれれば痛みなどの症状がよくなり、見た目も元の状態に近づきます。

一方で、穿刺吸引治療では液体が溜まっていた袋の部分を取り除くことはできません。このため、袋の中に再び液体が溜まり再発してしまうことがあります。再発率は手術より穿刺吸引治療のほうが高いことが知られています。 なお、穿刺吸引治療の時間は針を刺して中身を抜ききるまでで、数分程度です。治療後の受診は1回で終わることもあります。

ガングリオンの穿刺吸引治療のイラスト(針を刺して中身を抜く治療)

手術(外科的治療)

手術では穿刺吸引治療とは違って、ガングリオンの中身の液体部分だけでなくそれを包む袋ごと摘出することができます。ガングリオンを袋ごと取り除けるので再発しにくい状況になります。ただし、手術では皮膚を切る必要がありますので、治療後には皮膚に傷が残ってしまいます。 また、治療にかかる時間は穿刺吸引治療より長く、数十分から1時間程度です。ガングリオンのできた場所や大きさによって手術時間は変わります。 穿刺吸引治療と異なり、治療後に傷の状態を確認するために数回通院します。

ガングリオンの手術のイラスト

穿刺吸引治療と手術(外科的治療)の比較

穿刺吸引治療と手術のそれぞれの特徴について説明しました。この2つの治療法のメリットとデメリットを比較した表を示します。

【穿刺吸引治療と手術(外科的治療)のメリット・デメリット】

  穿刺吸引治療 手術
メリット ・痛みが小さい
・傷が残らない
・再発が少ない
デメリット ・再発が多い ・穿刺吸引治療より痛みが大きい
・傷が残る

表から2つの治療法のメリットとデメリットを見て、自分が何を優先したいのかを考えてみてください。そうすることで自らに合った治療を選ぶことができます。

3. ガングリオンは治療後に再発するのか

ガングリオンは治療後に再発することがあります。治療法によって再発率も異なるので、以下では穿刺吸引治療と手術を分けて説明します。

穿刺吸引治療後の再発

穿刺吸引治療後には約半数の人で再発が起こるとされています。再発した場合、もう一度穿刺吸引治療を受けるか手術を受けるかを選ぶことができますが、メリットとデメリットを考えて選ぶ必要があります。もう再発させたくないと考えるならば、手術のほうが望ましいです。一方で、また再発するかもしれないけれど、傷が残らないことが大切だと考えるならばもう一度、穿刺吸引治療を行うこともできます。

手術後の再発

手術後の再発率は約10%とされており、穿刺吸引治療より再発は少ないです。手術後の再発が起こった人は穿刺吸引治療と手術のどちらも行うことができます。

手術の影響によって関節や腱の形が変わってしまうことがあります。初回の時とは形が変わっているので手術によって筋肉や神経を傷つけてしまう可能性が高い場合もあり、その際には手術ではなく穿刺吸引治療を選んだほうがよいです。

4. ガングリオンを治療するには何科を受診すればいいのか

ガングリオンに対する穿刺吸引治療や手術といった治療は皮膚科や整形外科で行われます。これらの治療には特別な設備などは必要ないので、大きな病院に行かなくても治療できることがほとんどです。

参考文献
・井樋栄二/編, 標準整形外科学, 医学書院, 2020
・Keyser F D, Ganglion cysts of the wrist and hand, UpToDate