きんだんれつ(にくばなれ)
筋断裂(肉離れ)
筋肉の線維が切れること。スポーツや重労働など、急激に力を入れることで、筋肉が耐えきれずに線維が断裂する
6人の医師がチェック 101回の改訂 最終更新: 2024.08.16

筋断裂(肉離れ)の治療について:応急処置、鎮痛剤の使用などについて

筋断裂とは、文字通り筋線維が切れてしまうことです。スポーツ活動が主な原因となります。筋線維の一部が切れること(部分断裂)ことを一般的に肉離れと呼びます。ここでは筋断裂(肉離れ)が起きたときの応急処置、治療、リハビリについて詳しく解説します。

1. 筋断裂(肉離れ)の応急処置

肉離れは主に、スポーツで急に過剰な負荷のかかった筋肉が一部断裂することで起こります。肉離れ治療の原則は、十分に安静にして筋肉が修復されるまでじっくり待つことです。ストレッチをした時に肉離れをしていない側と同じような感覚に戻るまで、しっかりと安静期間をとって休養する必要があります。

まずは、「肉離れしてしまった!」と感じて医療機関に行くまでの応急処置について解説します。

受傷直後は「RICE(ライス)」と呼ばれる応急処置を行うことが一般的です(RICEは英語で「米」という意味ですが、特に米とは関係ありません)。

【応急処置:RICE】

  • R:Rest 安静
  • I:Icing アイシング(冷却)
  • C:Compression 圧迫
  • E:Elevation 挙上

このように、安静にして、凍傷にならない程度に患部を冷やし、軽く患部を圧迫し、心臓よりも患部を高い位置にして血流を減らす、という応急処置が良いとされています。「圧迫」は、患部の内出血や腫れを軽減する目的で行いますが、強く圧迫しすぎると全く血流が来なくなってしまい危険です。どの程度の強さで圧迫してよいか分からない時は、医療機関に行くまでは積極的に圧迫しなくても構いません。

また、近年はRICEに変わって「POLICE(ポリス)」と呼ばれる応急処置が推奨されるようになってきています(POLICEは英語で「警察」という意味ですが、特に警察とは関係ありません)。

【応急処置:POLICE】

  • P:Protection 保護
  • OL:Optimal Loading 適切な負荷
  • I:Icing アイシング
  • C:Compression 圧迫
  • E:Elevation 挙上

RICE→POLICEでは「安静」が「保護・適切な負荷」に置き換わっています。「保護・適切な負荷」とは、過剰な負担はかけないようにしつつも多少は動かしましょう、ということです。

このように変わったのは、「必要以上に安静にして固定すると筋肉が萎縮したり、関節が固くなり良くない」という考え方が近年確立されてきたからです。しかし、これもやはりどの程度が適切な負荷なのかは分かりにくく、少なくとも医療機関に行くまでは安静を心がけるだけでよいと思います。

まとめると、受傷してから医療機関に行くまでなるべく負荷をかけないで、凍傷にならない程度に休みながら患部を冷やし、可能ならば患部を軽く圧迫して挙上しておくのが良さそうです。

2. 患部の保護

応急処置の際に、肉離れした部位に過剰な負荷をかけないことが重要と説明しました。このように患部を保護することは、医療機関で肉離れの診断がついた後も必要です。

軽症の人ではジャンプやダッシュなどの強い負荷を避けるだけで済みます。しかし、歩くだけでも強い痛みを伴うような人では、松葉杖を使うなどして脚に荷重を避けるよう指導されることもあります。

3. 鎮痛薬(痛み止め)

医療機関で肉離れの診断がつけられると、痛みの程度に応じて痛み止めを処方してもらえます。痛み止めの種類としては、以下のようなものがあります。

【痛み止めの種類】

  • 貼付薬(貼り薬:湿布)
  • 塗布薬(塗り薬)
  • 内服薬(飲み薬) など

どれを使っても肉離れが特段早く治癒するわけではないので、お医者さんと相談しつつ好みのものを使うとよいと思います。また、痛みが引いてきた人は特に指示がなければ、処方された痛み止めを全て使い切る必要はありません。

4. 手術

肉離れに対して手術が行われることは通常ありません。しかし、筋肉が完全断裂しているような人では、安静だけでうまく修復されないことがあるため、手術による治療が検討されます。

5. リハビリ

早く競技に復帰したいという気持ちから、まだ痛みがあるのに運動を再開してしまう人は少なくありません。しかし、筋肉が十分に回復していない状態で負荷をかけると肉離れが再発したりクセになってしまう可能性があり、推奨できません。

肉離れの程度によりますが、断裂した筋線維が修復されてくるのには2-4週間ほどかかります。ストレッチしても痛みや違和感が出なくなるまでしっかりと休養してから、ジャンプやダッシュなどを再開するようにしてください。

安静にしている間、患部以外の筋力トレーニングをしたり、全身のストレッチをして柔軟性を高めたりすることで、今後のケガ予防に役立つことが期待できます。