ほじきんりんぱしゅ
ホジキンリンパ腫
リンパ球からできたがん(悪性リンパ腫)の一種。悪性リンパ腫の8-10%程度を占める
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最終更新: 2023.05.09
ホジキンリンパ腫の基礎知識
POINT ホジキンリンパ腫とは
リンパ球は血液中を流れる白血球の一種であり、免疫に関わる細胞です。リンパ球に由来する悪性腫瘍(がん)のことを悪性リンパ腫と呼びます。悪性リンパ腫にも様々なタイプがありますが、ホジキンリンパ腫はそのうちのひとつです。日本人における悪性リンパ腫全体の8-10%ほどを占めます。症状としては、痛みを伴わないリンパ節の腫れ、発熱、体重減少、寝汗などがあります。診断は腫れているリンパ節を採取して、顕微鏡で腫瘍細胞を確認することにより行われます。病状を評価するために、CT検査やPET検査などの画像検査、採血検査、骨髄検査などもしばしば行われます。治療は抗がん剤や放射線治療で行い、骨髄移植を行うこともあります。治療により完全に治癒する人もいます。ホジキンリンパ腫が心配な人や治療したい人は血液内科を受診してください。
ホジキンリンパ腫について
- 悪性リンパ腫(
リンパ球 に由来するがん )の一種 - 日本では、10万人あたり約1人程度でホジキンリンパ腫を
発症 する- 15歳-35歳の若い人と、55歳を過ぎた人に多く見られる
- 顕微鏡での見た目によって、古典的ホジキンリンパ腫と、節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫の2種類に分類される
- ホジキンリンパ腫の95%は古典的ホジキンリンパ腫である
- 古典的ホジキンリンパ腫はさらに以下の4つに分類される
- 結節硬化型(最も多い。若年者に起きやすい。首の
リンパ節 が腫れることが多い。) - 混合細胞型
- リンパ球優位型
- リンパ球減少型
- 結節硬化型(最も多い。若年者に起きやすい。首の
ホジキンリンパ腫の症状
リンパ節 の腫れ(特に首のリンパ節が腫れることが多い。通常痛みは出ない。)- B
症状 (発熱、体重減少、寝汗を合わせて専門的にB症状と呼ぶ)- 発熱(38℃以上)
- 体重減少
- 寝汗(医学的には盗汗:とうかん、と呼ぶことが多い)
ホジキンリンパ腫の検査・診断
リンパ節 生検 、病理検査- 腫れているリンパ節を針で刺して採取する、あるいは手術して採取する
- 採取したリンパ節を顕微鏡で確認する
- ホジキン(Hodgkin)細胞およびリードスタンバーグ(Reed-Sternberg)細胞という
腫瘍 細胞が検出されればホジキンリンパ腫の診断となる
- 血液検査
- 全身の状態をチェックして治療方針決定に役立てる
- 血液中の
白血球 やリンパ球 の異常がないか調べる
- 画像検査:腫瘍の大きさや位置などを調べる、治療効果を判定する
CT 検査PET検査
骨髄 検査:骨髄にがん 細胞がないかを調べる- 腰骨や胸の骨から骨髄を採取して顕微鏡で確認する
- 骨髄における
癌 細胞の有無はPET検査である程度代用できるため、骨髄検査は必ずしも行われない
ホジキンリンパ腫の治療法
- まずはアナーバー(Ann Arbor)分類という分類で病気の
ステージ を決定する- 1A, 1B, 2A, 2B, 3A, 3B, 4A, 4B期に分けられ、4B期が最も進行した状態
- アナーバー分類は腫れている
リンパ節 の個数、位置、B症状 の有無で判定する
- アナーバー分類1A, 1B, 2A, 2B期の一部(限局期)に対する治療方針
化学療法 (抗がん剤 )を4回ほど行った後に、腫瘍 に対する放射線治療 を行う- ABVD療法という化学療法を行うのが一般的
- アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの併用療法をABVD 療法とよぶ
- アナーバー分類2B期の一部、3A, 3B, 4A, 4B期(進行期)に対する治療方針
- 化学療法(ABVD療法など)を6-8回ほど行う
- 放射線治療を追加する場合もある
- ホジキンリンパ腫が治療後に再発・再燃した場合の治療方針
- 65歳以下で化学療法の反応性が良い場合には
骨髄移植 を行うことが多い - 骨髄移植が出来ない場合、骨髄移植後の再発の場合には、ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)という薬剤を用いることが多い
- ニボルマブ(オプジーボ®)などの
免疫 チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤も近年は使われる
- 65歳以下で化学療法の反応性が良い場合には
- ホジキンリンパ腫は
血液がん の一種であるが、その中では長期的な経過が良い方であり、進行期の場合でも十分な治療をすることで長期生存が見込める可能性も十分ある - 化学療法の施行中には、感染に弱い状態になるため手洗い、うがい、マスク着用などの感染対策を徹底する
ホジキンリンパ腫に関連する治療薬
NK1受容体拮抗薬
- 抗がん薬による嘔吐中枢への刺激を阻害し、悪心(吐き気)・嘔吐を抑える薬
- 抗がん薬投与による悪心・嘔吐は延髄に嘔吐中枢に刺激が伝わりおこる
- 脳のCTZや中枢神経に多く存在するNK1(ニューロキニン1)受容体が作用を受け嘔吐中枢に刺激が伝わる
- 本剤はNK1受容体を阻害することで嘔吐中枢への刺激を抑える
- 原則として、5-HT3受容体拮抗薬(吐き気止め)と併用する
5-HT3受容体拮抗薬
- 抗がん薬による嘔吐中枢への刺激を阻害し、悪心(吐き気)・嘔吐を抑える薬
- 抗がん薬投与による悪心・嘔吐はいくつかの経路によって延髄にある嘔吐中枢に刺激が伝わることでおこるとされる
- 伝達物質セロトニンは脳のCTZ(化学受容器引金帯)や消化管にある5-HT3受容体を介して嘔吐中枢へ刺激を伝える
- 本剤は5-HT3受容体への拮抗作用により、嘔吐中枢への刺激を阻害する
- 薬剤によっては、放射線照射や手術後における消化器症状(吐き気など)に使う場合もある
分子標的薬(ニボルマブ〔ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体〕)
- がん細胞を攻撃するリンパ球T細胞を回復・活性化させ、がん細胞に対する免疫反応を亢進させることで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 通常であれば、がん細胞は体内で異物とされリンパ球のT細胞によって攻撃を受けるが、がん細胞が作るPD-1リガンドという物質はリンパ球の活性化を阻害する
- 本剤はPD-1リガンドによるリンパ球の活性化阻害作用を阻害することで、T細胞のがん細胞へ攻撃する作用を高める
- 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる