Beta 1型糖尿病のQ&A
- のどの渇き
- 尿量の増加
- 体重減少:糖尿病は肥満者に多いのですが、糖尿病によって体重自体は減少します
- だるさ、疲れやすさ
- 血糖値:「空腹時の測定で126mg/dl以上」または「どのタイミングでの測定であろうと200mg/dl以上」または「75g OGTT試験(後述)で2時間値が200mg/dl以上」
- HbA1c:6.5%以上
- 膵臓で分泌されるインスリンの量が不足している
- 体内でインスリンの効果が十分に発揮されない(インスリン抵抗性と呼ばれる)
- 過食
- 肥満
- 運動不足
- 加齢
- ストレス
- 免疫異常(自己免疫)
- 遺伝
- 妊娠
- 内服薬
- 食事療法、運動療法
- インスリン療法(注射薬)
- 経口血糖降下薬療法(内服薬)
- GLP-1受容体作動薬療法(注射薬)
- 1型糖尿病:
膵臓のβ細胞が何らかの理由で破壊されてしまい、インスリンが十分に分泌されなくなってしまった状態です。免疫異常(自己抗体と呼ばれる、自分の体を攻撃してしまう免疫物質が作られる)に加えて、遺伝による因子、感染などが影響することがあります。自力でインスリンを産生することができないため、治療上、インスリンの注射が必須となる場合がほとんどです。 - 2型糖尿病:
β細胞から分泌されるインスリンの量が低下したり、体がインスリン抵抗性と呼ばれる状態に陥り、インスリンホルモンが十分な効果を発揮できなくなったりした状態です。内服の糖尿病薬や、インスリンの注射などを適宜組み合わせて使用します。 - 日常的に軽い作業を行う人(デスクワークが多い職業など):身長(m) × 身長(m) × 22 × (25~30) kcalを目標とします
- 日常的に通常の作業を行う人(立ち仕事が多い職業など):身長(m) × 身長(m) × 22 × (30~35) kcalを目標とします
- 日常的に重い作業を行う人(力仕事が多い職業など):身長(m) × 身長(m) × 22 × (35~) kcalを目標とします
- 炭水化物(糖質):
炭水化物として摂取するカロリーは、上記総カロリー量の50%-60%を目標とします。なお、カロリー量を4で割ると、摂取すべき炭水化物のグラム数を計算することができます。- 例:1日の総カロリー摂取目標が1800kcalであれば、その60%は1080kcalになります。これを4で割った270gの炭水化物を摂取します。
- タンパク質:
摂取するタンパク質の量は、身長(m) × 身長(m) × 22 × (1.0~1.2) gを目標とします。これを逆にカロリー量に換算するには、グラム数に4をかけることで計算ができます。- 例:身長が170cmの場合、1.7 × 1.7 × 22 × 1.2 = 76.3gのタンパク質摂取を目安とします。これは76.3 × 4 = 305kcalに相当します。
- 脂質:
総カロリー量のうち、上記の残りを脂質として摂取します。脂質の場合には、カロリー量を9で割ることで、摂取すべきグラム数を計算することができます。- 例:1日の摂取目標1800kcalから、上で計算した炭水化物の1080kcalと、タンパク質の305kcalを引くと残りは415kcalであり、これが脂質として摂取する分です。415kcalを9で割った46gが、摂取すべき脂質の分量となります。
- 空腹感
- イライラ、不安感
- 異常行動:つじつまの合わない言葉を発したり、行動をとったりする
- 意識消失:気を失って反応がなくなってしまう
- 麻痺:手足が動かしにくくなる
- けいれん:手足が震えたり、勝手に細かく動いたりする
- 発汗:暑くもないのに汗が大量に出てくる
- 糖尿病性網膜症:国内で成人の失明原因の第1位
- 糖尿病性腎症:国内で成人の血液透析導入原因の第1位
- 糖尿病性神経障害:足のしびれなどは初期から出やすい症状の一つ
- 虚血性心疾患:急性心筋梗塞など
- 脳卒中:脳梗塞、脳出血など
- 末梢動脈疾患:足などの太い血管が狭くなり、痛みの原因となる
- 糖尿病ケトアシドーシス:急激に血糖値が上昇して意識障害を来すことがある
- 高血糖高浸透圧症候群:糖尿病ケトアシドーシスと同様に、急激に血糖値が上昇して脱水状態になる
- 家庭にある砂糖は、ブドウ糖ではなくショ糖のため、ブドウ糖よりも効果が出るのが遅れる点に留意する必要があります
- 手元にショ糖しかない場合には、少なくともブドウ糖の倍量を摂取します
- 低血糖で意識がない人の口に、水分を無理やり流しこむことは避けるようにします
- 本人の意識がない場合には、周囲の人で救急車を呼ぶと同時に、ブドウ糖を口唇の裏(歯茎の部分)に塗るようにします
- インスリンの調整(種類の変更や量の増減)、日々の血糖推移の確認や、食事療法の学習を目的とした定期入院で、教育入院と言われることがあります。糖尿病の発症初期に入院したり、もしくは血糖のコントロールに難渋し、治療薬を変更したいなどの場合に入院を勧められる場合があります。
- 強い低血糖症状を起こした場合にも、入院が必要となることがあります。血糖値の低下が重度だと意識を失うといった症状も出るため、そのような場合は緊急入院が必要となります。インスリンは大切な治療薬ですが、不適切な使い方をすると低血糖を起こしやすいため、仕組みをきちんと理解した上で使用することが重要です。
- 高血糖による入院が必要になることもあります。特に糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群といった状態になると命に関わる場合がありますので緊急入院が必要です。
1型糖尿病はどんな症状で発症するのですか?
血糖値が高いことそのものによる症状と、急激に血糖値が上昇することによって起きた合併症が原因の症状があります。
血糖値が高いことによる症状には以下のようなものがあります。
また、急激に血糖値が上昇することで、糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる病態が起き、腹痛や嘔吐、意識障害などの症状が生じることがあります。
1型糖尿病は、どのように診断するのですか?
採血で血糖値とHbA1cを確認するのが、糖尿病診断の基本的手順となります。下記診断基準にしたがって、血糖値とHbA1cの両者が基準を満たしていた場合には、その時点で糖尿病と診断されます。
血糖値またはHbA1cのいずれか一方のみが診断基準を満たしている場合には、糖尿病の典型的な症状があるかどうかや、後日に血液を再検査した結果によって診断がなされます。
※75g OGTT試験:前日から10時間以上絶食とした後、75gのブドウ糖を水に溶かして服用します。その後、定められた時間(糖尿病を診断する場合は2時間後)の血糖値を測定します。
上記の手順で、糖尿病の診断を行った上で、糖尿病が1型か2型かは、自己抗体と呼ばれる免疫異常があるかどうかや、それまでの経過、家族歴、生活歴などから総合的に判断します。
1型糖尿病の原因、メカニズムについて教えて下さい。
糖尿病の直接的な原因は以下の2つです。
これらのいずれか、あるいは両方の影響で、血糖値が高い状態が持続してしまいます。1型糖尿病では、上記1番のインスリン量不足が大きな原因です。
そして上記1, 2番両方の更なる原因としては以下のようなものが挙げられます。
これらの要素が積み重なって高血糖状態に至り、様々な合併症につながるのが糖尿病であると言えます。
1型糖尿病の治療法について教えて下さい。
糖尿病全般の治療には大きく分けて以下の4種類があります。
この中で、1型糖尿病の場合に用いられるのは最初の2つ(食事・運動療法と、インスリン療法)です。これらの作用については、以下で詳しく解説します。
糖尿病の中で、1型と2型の違いについて教えて下さい。
糖尿病は、その原因と病態によって1型と2型に分類されます。
以上をまとめると、インスリンの生産工場である膵臓β細胞が壊れてしまうのが1型糖尿病であり、一方で、工場は壊れていないもののインスリンの生産力が低下したり、生産しているインスリンが体になかなか受け付けてもらえなくなるのが2型糖尿病と考えることができます。
1型糖尿病の血液検査で測る、「HbA1c」について教えて下さい。
血液検査の項目の一つで、「ヘモグロビン エー ワン シー」と読みます。
血糖値は糖尿病の程度の目安にはなるのですが、食直後には急上昇し、その後低下するといったように、1日の間で様々な値を取ります。したがって、血糖値を指標にするためには、食事の直前や、食事の2時間後など、決まったタイミングで継続的に測定する必要があります。
その一方で、1日の間でいつ測定しても値がほとんど変動しないのがHbA1cです。HbA1cは血液中のヘモグロビンのうちブドウ糖と結合したものの一種です。直近1-2ヶ月間の平均血糖値を反映していると言われ、数週間かけてゆっくりと変動します。HbA1cが6.5%を超えていることが糖尿病の診断基準の1つに含まれています(ただし必須項目ではありません)。
1型糖尿病の食事療法について教えて下さい。
糖尿病全般について言えることですが、食事については、1日の摂取エネルギー量(カロリー量)の目安を設定します。その人の生活習慣や仕事内容に応じて、3段階に分けて計算します。
その上で、摂取エネルギー量の中での炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質の内訳を以下のように考えます。何段階かに分けた計算が必要ですが、複雑な数式は必要ありませんので、順を追って説明します。
エネルギー源には炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質があります。全部の合計で1日何キロカロリー摂るかということも重要ですし、そのカロリーの内訳にも目安があります。
目標エネルギー量はカロリーで示されるのに対して、実際に販売されている食品に記されているのは炭水化物、タンパク質、脂質のグラム数です。2種類の数値があるので、一見理解が難しく感じられてしまうかもしれません。
グラム数それぞれに、炭水化物かタンパク質ならば「4」、脂質ならば「9」をかけると、カロリー量に換算することができます。
1型糖尿病が重症化すると、どのような症状が起こりますか?
糖尿病を未治療のまま放置すると、様々な合併症が生じます。心筋梗塞は命を左右する重大な病気ですし、糖尿病性網膜症は成人の失明原因の第1位です。糖尿病性腎症によって血液透析を隔日で受け続けなければならない方も多く、これはQOLが大きく低下し得る要因の一つです。
また、血糖値が高いと免疫細胞が十分に働くことができないため、肺炎や蜂窩織炎といった感染症にかかりやすく、かつ、重症化しやすくなります。骨髄炎という骨の感染症や重症の肺炎などでは、病院で治療を受けたとしても、中には助からない場合があります。
1型糖尿病の運動療法について教えて下さい。
糖尿病患者では、運動療法によって、血糖値が低下したり、虚血性心疾患の発症が抑制されたりするといった、有益な効果が確認されています。
運動としては有酸素運動が勧められていますが、その際には1分間の心拍数を目安とします。50歳未満では100-120回、50歳以降は100回以内が目安となります。感覚としては「楽である」または「ややきつい」といった程度であり、「きつい」と感じるほどに取り組む必要はありません。
運動療法はとても大切です。しかし糖尿病がある方は足に潰瘍ができやすいため、靴ずれなどで傷がつくことのないよう、十分に気をつける必要があります。
その他にも低血糖を避ける事や、糖尿病の様々な合併症がある場合にはそれらに対する配慮も必要なため、運動を行う前に医療者に相談して、「自身がすぐに運動をして良い病状かどうか」と「運動の際の注意点」を確認しておくことが重要です。
1型糖尿病の原因に関係する、インスリンの働きについて教えて下さい。
インスリンは膵臓のβ(ベータ)細胞から分泌され、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を低下させる作用をもつホルモンです。適切なタイミングで、適切な量のインスリンが分泌され、かつインスリンの効果が十分に発揮されると、血糖値が正常範囲内に保たれやすくなることになります。
1型糖尿病で起きる低血糖とは何ですか?どんな症状が出るのですか?
インスリンの効きすぎなどで血糖値が40-60mg/dlを下回ると、脳が消費できるブドウ糖が不足して様々な症状が出現します。これを低血糖と呼びます。
主な症状としては以下のようなものがあります。
これらの症状は適切な対応(ブドウ糖の摂取)を取ればすぐに改善する一方で、血糖値が上がらない限り、時間が経っても自然に改善することはありません。
低血糖時の対応については、治療の欄でも解説していますので、ご参照下さい。
1型糖尿病に関連する、「糖尿」や「尿糖」とは何ですか?
糖尿病患者の尿には、その名の通り糖分(ブドウ糖)が含まれていることがあります。尿中に含まれる糖のことを尿糖と呼び、その尿のことを糖尿と呼ぶことがあります。ただし尿糖自体は糖尿病患者以外でも見られることがあるため、検査としてはあくまでも参考にするに止められ、糖尿病の診断に利用されることはありません。
1型糖尿病の人が他に注意すべき病気はありますか?
糖尿病では全身の血管に動脈硬化が生じ、様々な合併症を引き起こします。
これらはあくまでも糖尿病によって引き起こされる病態の一部であり、他にも様々な合併症があります。疾患の詳細は、それぞれのページをご覧ください。
1型糖尿病は、遺伝する病気ですか?
両親が糖尿病なら子にも必ず遺伝するというものではありませんが、特に2型糖尿病について言えば、糖尿病になりやすい体質は遺伝すると言われています。
その一方で、1型糖尿病の一部には遺伝子の異常が関わっているのですが、多くは遺伝しません(親が1型糖尿病であっても、子が1型糖尿病を発症する割合は高くありません)。
1型糖尿病の治療である、インスリン療法について教えて下さい。
糖尿病とは体内のインスリンホルモンが不足している、もしくは効果が不十分であることによる病気ですから、体の外からインスリンを補充してあげることは理にかなった治療法です。インスリン製剤は注射薬であり、医療者の指導を受けた上で、患者さんが自身で注射を行うことができます。血管内に注射する静脈注射ではなく、腹部の皮膚に刺す皮下注射です。
インスリンには、超速効型、速効型、中間型、混合型、持効型と呼ばれる種類があり、それぞれ注射をしてから効果が発揮されるまでの時間や、効果が持続する時間が異なります。超速効型は注射後10-20分程度で血糖値が下がり始め、効果は0.5-3時間ほどしか持続しません。持効型は血糖が下がり始めるまでに1-2時間を要しますが、効果は18-24時間持続します。どちらが良いというわけではなく、血糖値の推移や、その人のライフスタイルに応じて適切なものを選択します。1型糖尿病の場合には、超速効型と持効型の2種類を併用することが基本となります。
インスリンは血糖値を下げる上で最も確実な効果のある良い薬ですが、使い方を間違えると血糖値が下がり過ぎて低血糖が起きるため、しっかりと説明を受けて理解した上で使用する必要があります。
1型糖尿病でインスリン注射を始めると、それを生涯続けなければならないのですか?
1型糖尿病の方や、2型糖尿病の方でも病状に応じては、インスリン注射が必須で避けられない場合があります。その場合には「インスリンを使うことが望ましい」のではなく、「インスリン以外の治療法がなく、かつインスリン注射を行わないと場合によっては数日間で重症化して意識障害を来たし得る」ようなことがあります。
インスリンに依存性があるわけではありませんが、インスリンがどうしても必要な場合には、インスリン注射を行うしかありません。1型糖尿病の場合には、一度インスリンが必要になってからは、その後もインスリンを使用し続ける必要がありますので、仕事や食生活を踏まえた上で各自に最もあったインスリンの使用法を、医療者と一緒に探していくことになります。
1型糖尿病の治療中に、食べ過ぎてしまった時にはインスリンの量を増やすべきですか?
現在使用されているインスリンのうち、超速効型インスリンと言われるものは、食事による高血糖を改善させるために使用するものです。理論的には、体内に入ってくる糖分が多くなれば、それだけインスリンを増やすことが妥当だと言えます。
しかしながら、食べ過ぎた時にどれくらい(インスリン何単位分だけ)血糖値が上がるのかということや、インスリンを増やしたことでどれだけ血糖値が下がるのかといった程度には個人差があります。また併用している治療薬との関わりもあるため、一概に増やすべきとは言えません。増やすことが適切な場合(人)と、そうでない場合(人)がいますので、血糖測定の結果を基に、主治医と個別的に相談する必要があります。
体調が悪く食事が取れない時は、1型糖尿病のインスリンをどうするべきですか?
感染症などが原因で食事があまり取れないような日のことを「シックデイ (sick day) 」と言います。使っているインスリンの種類ごとに特別な対応が必要になるため、まずはよく主治医と相談することが大切です。食事があまりとれなくても血糖値が上昇することは多く、それに伴い入院が必要な程の高血糖になってしまうこともあるので、自己判断で治療薬を中止しないということが重要です。また、出来るだけ食べやすいものを口にし、脱水にならないよう水分をとることも大切です。
持効型と言われる1日効果が持つようなインスリンは原則中止にしませんが、超速効型と言われる食事に対して注射するインスリンの場合には、食べられた量に応じた薬剤量(インスリンの単位数)の調整が必要になります。
1型糖尿病で、低血糖になった場合の応急処置には、どんなことがありますか?
低血糖になった場合に、まず行うべきなのはブドウ糖を摂取することです。10gのブドウ糖を摂ることで、低血糖の症状がやがて改善してきます。
固形のものを口に入れても、ブドウ糖を含む飲料水を摂取しても良いのですが、いくつか注意しなければならない点があります。
また、応急処置用に血糖値を上昇させる注射(グルカゴン)を医療機関で処方されている場合もあります。あらかじめ家族が注射方法について知っておくと、迅速に対応をすることができます。
ブドウ糖は病院で処方してもらうことができますので、低血糖になった場合のために常に持ち歩いておく必要があります。
1型糖尿病で入院が必要なことはあるのですか?
糖尿病が直接的な原因となる入院は、主なものでは三つあります。
1型糖尿病は、完治する病気ですか?
残念ながら、現状では1型糖尿病を完治させることは困難です。様々な合併症を予防するため、継続的にインスリン製剤を使用していくことになります。