そうぼうべんへいさふぜんしょう(そうぼうべんぎゃくりゅうしょう)
僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症)
心臓の左心房と左心室の間の弁(僧帽弁)がうまく閉じなくなった状態。リウマチ熱による感染で起こることが多い
14人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症)のQ&A

    僧帽弁閉鎖不全症の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    人間の血液は肺から心臓に帰ってくる時に肺→左心房→左心室へと流れ、左心室から全身へ血液が送り出されます。僧帽弁は左心房と左心室の間についている「弁」であり、僧帽弁があることで左心房→左心室という血液の流れが正しい一方通行に保てています。何らかの原因で僧帽弁の閉じ具合が悪くなると、本来左心房→左心室と流れていた血液に一部逆流が生じてしまい、左心室→左心房への逆向きの血流が発生します。これが僧帽弁閉鎖不全症です。

    原因は動脈硬化や弁の肥厚など僧帽弁自体の異常や、僧帽弁を支える支柱(腱索)の損傷である場合、心不全や心筋梗塞などの心臓疾患が原因となって起こる場合などがあります。

    僧帽弁閉鎖不全症は、どんな症状で発症するのですか?

    僧帽弁閉鎖不全症はほとんどの場合無症状で経過するため、健診などで心音の異常や心電図異常が見つかって、その後の精査の結果として診断がつくことがほとんどです。

    進行して逆流が高度になってくると心臓に過剰な負担がかかり、息切れや足のむくみなどの心不全症状が出現します。稀ではありますが急性の僧帽弁閉鎖不全症を発症したときは突然の呼吸困難を自覚する場合がありますので、すぐに治療する必要があります。

    僧帽弁閉鎖不全症は、どのように診断するのですか?

    まずは聴診で心臓の異常な音(心雑音)を確認することで僧帽弁閉鎖不全症を疑いますが、軽度の逆流であれば心雑音が聴こえないこともあります。レントゲン写真で心臓が大きくなっていることから疑いをつける場合もあります。

    最終的には心エコー検査で、僧帽弁を通る血液の逆流を実際に確認することで診断がつくことになります。心エコー検査には経胸壁エコー(胸の上から超音波をあてる)と経食道エコー(食道の中から超音波をあてる)があります。経食道エコーは胃カメラと同じように管を飲み込んで行う検査です。苦痛をともなうこともあるので経胸壁超音波でまずは診断をつけて、場合によっては経食道エコーでさらに精査を行うことがあります。

    僧帽弁閉鎖不全症の治療法について教えて下さい。

    軽度から中等度の閉鎖不全であればほとんどの場合無治療で経過観察が可能です。場合によっては半年から1年おきに外来での心エコー検査を行い、血液の逆流量が増えていないかなどを確認します。

    僧帽弁閉鎖不全症は僧帽弁の構造的な異常なので、内服薬で弁そのものを治癒させられるものではありません。息切れやむくみなど心不全の症状が出現している場合は利尿薬、血管拡張薬などの内服薬で加療を行います。しかし自覚症状を伴う場合や心拡大が起きている場合など、重度の逆流によって心臓への負荷が強くなっている場合は手術が望ましいと言えます。

    手術は大きく分けて2種類に分かれます。

    • 僧帽弁形成術:僧帽弁に縫合などの手を加えて形を整える
    • 僧帽弁置換術:もともとの僧帽弁を切り取って新しい弁に取り替える(機械弁と生体弁という2種類の弁があります)

    最近は治療成績の面などから可能であれば僧帽弁形成術を先に検討しますが、年齢や逆流具合などにより、どちらが適しているかは場合によります。海外では胸に傷を残さずに血管の中から治療するカテーテル治療も行われていますが、国内ではまだ一般的な治療法とは言えません。

    僧帽弁閉鎖不全症と心臓弁膜症の違いについて教えて下さい。

    心臓には僧帽弁以外にも大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁があります。

    心臓弁膜症とは心臓の弁に関わる病気全体のことを指しますので、僧帽弁以外の大動脈弁疾患、三尖弁疾患なども含めて弁膜症と呼びます。僧帽弁閉鎖不全症も弁膜症の中のひとつです。

    僧帽弁閉鎖不全症の、その他の症状について教えて下さい。

    僧帽弁閉鎖不全症があると血液が左室から左房へ逆流しますので、左房に大きな負担がかかります。この影響で左房が痛み、不整脈(心房細動)が起きると動悸を自覚することがあります。

    僧帽弁閉鎖不全症は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    僧帽弁閉鎖不全症は、心臓弁膜症の中で最も一般的な弁膜症です。

    高齢者で心エコー検査をすれば僧帽弁閉鎖不全症が見つかることは珍しいことではありません。自他ともに僧帽弁閉鎖不全症に気がつかないまま、特に日常生活に支障のあるような症状もなく過ごしている方は大勢いると考えられます。そのような医療機関を受診していない患者さんも含めると、正確な頻度は不明です。

    僧帽弁閉鎖不全症の、その他の検査について教えて下さい。

    血液の逆流の程度を評価するためカテーテル検査を行うことがあります。カテーテルという細い管を血管から心臓内部まで入れて造影剤を注入し、実際にどの程度血液の逆流が起きているかを確認します(左室造影と言います)。

    また原因として心筋梗塞などの虚血性心疾患が疑われる場合は冠動脈造影検査や、より詳しい血行動態を調べるために右心室や肺動脈にカテーテルを挿入するスワンガンツカテーテル検査を行うこともあります。

    僧帽弁閉鎖不全症の手術で用いられる、機械弁と生体弁はどう違うのですか?

    生体弁は牛の心膜や豚の弁を用いて作られた弁です。機械弁に比べて耐久性に劣るため15年程度で劣化し、再度の手術が必要になる場合があります。

    機械弁は人工的に作りだした弁でカーボンやチタンなどから作られています。生体弁に比べて耐久性に優れる点がメリットですが、血液と接触して血が固まりやすく、血栓を形成するリスクが高いため抗凝固薬(ワルファリン)を生涯内服し続ける必要があります。

    どちらもメリットとデメリットがあるため、個人個人で、どちらがより適しているかを検討することになります。

    僧帽弁閉鎖不全症と診断が紛らわしい病気はありますか?

    聴診の心雑音のみでは他の弁膜症と区別がつきにくいことがあります。しかし最終的には心エコー検査で逆流そのものを確認して診断するため、心エコー検査を行いさえすれば、診断に苦慮することはあまりありません。

    ただし特殊な場合としては、安静にしていると逆流は起きていない(または軽度)ながら、運動など体に負荷がかかった時のみ逆流が重症化する場合があります。この場合は負荷検査などさらなる精査を必要とします。

    僧帽弁閉鎖不全症の人が他に注意すべき病気はありますか?

    僧帽弁閉鎖不全症の方は感染性心内膜炎という疾患に注意する必要があります。抜歯などの歯科治療後や、怪我などが原因で細菌が血中に入り込んだ場合、心臓内に血液の逆流があるが故に細菌が僧帽弁に巣をつくることがあります(この細菌のかたまりを、医学的には「疣贅(ゆうぜい)」と呼びます)。

    長期間の抗菌薬療法を必要とし、脳梗塞の原因となることもあれば、心臓の手術が必要となる場合もあります。感染性心内膜炎になると原因不明の微熱が続くことがありますので、このような症状があれば早めに医療機関を受診して精査する必要があります。

    僧帽弁閉鎖不全症が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    僧帽弁閉鎖不全症が悪化すると、それ自体の症状というよりも、心不全悪化による症状が起こります。

    心不全の代表的な症状は、息切れや足のむくみなどです。体重が増える、運動時の息切れだったものが安静時にも息切れを自覚するようになる、夜間息が苦しくて横になれない、身の置き所のないようなしんどさなどといった症状は、心不全の悪化を疑わせる症状です。

    僧帽弁閉鎖不全症の治療薬の使い分けについて教えて下さい。

    内服薬や点滴の薬は、逆流に伴う心不全症状などを軽減させるために用います。逆流の減少や、体内の水分量を適正化するために、利尿薬や血管拡張薬を用い、症状が強いときは強心薬を用いることもあります。

    ただしこれらはあくまでも症状を改善させるための治療であり、内服薬で弁の異常自体が治癒するものではありません。

    僧帽弁閉鎖不全症は、他人にうつったり、遺伝したりする病気ですか?

    僧帽弁閉鎖不全症は感染症ではないので他人にうつる病気ではなく、またこれ単独で遺伝する病気でもありません。

    ただし中には他の遺伝性心疾患に合併する僧帽弁閉鎖不全症(つまり、僧帽弁閉鎖不全症も含めて他にも様々な心臓の不具合が同時に生じる病気)もあり、そのようなものは遺伝することもあります。

    僧帽弁閉鎖不全症では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    自覚症状のない軽症から中等症のものであれば必ずしも入院は必要ありません。病院にもよりますが、半年から一年おきを目途に、外来で検査をしつつ経過観察することが一般的です。体のだるさや息切れ、むくみなど僧帽弁閉鎖不全症によると思われる症状が出現している場合や、手術を早期に検討していく場合には入院加療が必要となることが多いでしょう。

    僧帽弁閉鎖不全症は、再発する病気ですか?

    再発とは少し違いますが、内服治療で一旦症状が改善したとしてもその後逆流が悪化すれば再び症状が出現することがあります。

    弁置換術や弁形成術を受けた後でも、術後の経過によっては逆流が再発する場合があります。したがって、手術後も継続的な経過観察が必要です。

    僧帽弁閉鎖不全症に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    軽度の僧帽弁閉鎖不全症で症状もなければ、日常生活に制限をかける必要は特にありません。ただし長期的に病状が進行することはあるので、医師の指示により経過観察が必要と判断されれば、半年から1年おきの心エコーの確認は怠らないようにしましょう。

    それまでになかったような症状(特に息切れや足のむくみなど)が出現したときは心不全を発症している可能性があるので、早めの医療機関受診が必要です。また僧帽弁閉鎖不全症の影響で発症することのある感染性心内膜炎には注意が必要ですので、弁膜症のある方は抜歯などの歯科治療を行う際、歯科医師にその旨を伝える必要があります。歯科治療の内容によっては、事前に抗菌薬を内服するなどの対応をとることがあるためです。原因不明の発熱が長く続くときも、早めに医療機関を受診するようにして下さい。

    僧帽弁閉鎖不全症は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    高齢になると軽度の僧帽弁閉鎖不全症をいつのまにか起こしているということは珍しくありません。過度な心配はせず上手く付き合っていくことが重要と言えるのではないでしょうか。

    薬の内服や注射薬のみで完治する病気では基本的にありませんが、軽症のままで経過すれば手術の必要がない方も数多くいます。手術(僧帽弁置換術、僧房弁形成術など)を行ってその後の経過が良好であれば閉鎖不全症は改善したと言えますが、手術までに心臓への負荷が強かった場合には、手術の後も心不全症状が残存するため、継続的な薬の服用が必要です。


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